ダブルブルー

1.

電車を降りて、足早に歩く。


待ち合わせの時間までは、すでに5分を切っている。


遅れでもしたら、職場で何を言われるか…。


考えたら、ぞっとする。


目の前には、女の子の『可愛い』を振り撒いている、3つの背中。



何とか、間に合いそうだ。



とにかく、早く、早く…



焦りは、身体中を伝って正確に足下へと届く。


やばい…!


思った時には、冷たい地面に倒れこんでいる。


素早く立ち上がったつもりだったのに、


「やだぁ~!佐野さん、大丈夫ですかぁ~?」


くすくすくす。


嘲笑を纏う、3つの声が羞恥心とともに身体中をねっとりと包む。



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