追放聖女はスパダリ執事に、とことん甘やかされてます!

【番外編】何でも叶えて差し上げます

「レイ! こっちに来て!」


 ヘレナ様が私を呼ぶ。キラキラと輝く、太陽のような笑みだ。眩しさに目を細めつつ、私はヘレナ様の元へと向かう。陽だまりの中にいるかのように、胸がポカポカと温かかった。


 ヘレナ様に連れられ、侯爵家にやって来て今日で一週間。私はまるで貴賓が如く、丁重な持て成しを受けていた。
 ヘレナ様のご両親は、優しく穏やかな人で、いきなりやって来た私のことを温かく迎え入れてくれた。聞けば、こういったことは初めてではなく、その度に侯爵は新しい家や仕事を世話してやるのだという。


「あの子が連れてきたなら、良い人に違いないからね」


 侯爵はそう言って朗らかに笑う。言外に『君も含めてね』と言われ、胸がむず痒くなる。「そうですか」と返して、私はそっと俯いた。
 彼等は私の事情を無理に聞き出そうとしなかった。かといって無関心というわけでも無く、まるで家族のように優しく接してくれる。当時の私にとって、それはとてつもなく有難いことだった。


< 77 / 97 >

この作品をシェア

pagetop