秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
2.告白
そういえば少し前に、桜さんに『キスして』って言われたな・・。

あの時は酔っていて、寂しかったからそう言ったんだろう。


でも・・。

あれは俺にしてほしかったわけじゃなくて、誰でもよかったのだとしたら。


今夜『うちに来て』と言った桜さんの心の内は・・。


何度考えても、答えは見つからなかった。

それでも、やっぱり俺は嬉しくて、左手に持っていた小ぶりのフラワーアレンジを眺める。


そして、数え切れないほど訪れたはずの家なのに、今夜はインターホンを押す指が震えた。


「どうぞー」


ドアの向こう側、エプロン姿で微笑む桜さんに、俺は軽いめまいを感じた。


「えっ、あの・・なんで?」

「やだ、服部。なに慌ててるのよ。私だって料理くらいするんだから」

「あ・・えっと、これ、どうぞ」


狼狽えたまま、左手のフラワーアレンジを桜さんに渡す。


「ありがとう。テーブルに飾るね」


そう言うと、俺が玄関に上がるのを待たずに、キッチンに消えていった。


「ヤバイ・・なんだあれ、可愛い・・」


顔がニヤけるのを隠すように、俺は右手で口元を覆い俯いた。


エプロン姿も。
その姿で微笑むのも。
料理くらいすると主張した表情も。
花を片手にキッチンに消えていく後ろ姿も。


そのひとつひとつが、どれも可愛らしかった。


「はっとりーーー、どうしたのー?」


キッチンから俺を呼ぶ声に、もう今夜は我慢できそうにないなと思った。
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