身代わり花嫁として嫁ぎましたが、どうやら旦那様も身代わりのようです?

第51話 向き合う覚悟

 ロンベルク辺境伯に任命されたユーリ様の着任の日が近付いてきた。

 元々リカルド様の身代わりとしてユーリ様が全てのお仕事を担っていたので着任も何もないのだが、ウォルターに指示して王都から指示するのも限界がある。背中のケガも日常生活に問題ないほどに回復したので、いよいよ近日中にロンベルクに戻ることになったのだ。

 リカルド様がドルンに発った後も、両親の看病で忙しくてなかなかユーリ様と二人で話す時間は取れないままだ。


「奥様……じゃなかった、リゼットお嬢様。私はロンベルク辺境伯に雇われている身ですので、来週ユーリ様と共にロンベルクに戻らねばなりません」


 寝る前に、私の着替えを手伝ってくれていたネリーが言う。ネリーがロンベルクに戻ることもとっくに分かっていたことなのに、改めてそう言われると急に寂しくなってしまう。
 同時に、ユーリ様とお話しないまま別れることもできないと分かっている。


「明日は新しいお医者様が来られて、丸一日診察とリハビリになります。使用人たちが全て対応しますので、リゼット様の出番はありませんよ。ユーリ様とお出かけなさって来てください」

「ユーリ様と?」

「全くお二人でお話する時間が取れなかったではありませんか。明日は屋敷もバタバタしますので、お外に出て頂かないと逆にみんなが困りますよ」

「……そうなのね」


 ソフィの身代わりとしてロンベルクへ嫁いだ私と、リカルド様の身代わりとして旦那様のフリをしていたユーリ様。
 色々なすれ違いや誤解もあったけど、私は辺境伯の地位や家柄に惹かれたわけではない。

 私の好きな花を毎日早起きして届けてくれた優しさや、私が困らないようにいつも陰で思いやってくれるところに惹かれたのだと思う。

 はっきりとは聞いていないけれど、カレン様との関係が私の勘違いなのであれば、多分ユーリ様も私のことを想ってくれている。

 それなのに時間を作ってユーリ様と向き合う覚悟ができなかったのは、私のせいだ。

< 129 / 136 >

この作品をシェア

pagetop