ヒロインよ、王太子ルートを選べ!

第5話 出会いイベントへ!(レオナルド編)

 グランジュール王国の王都中央広場。
 朝日が昇ったばかりで店もまだ閉まっているこの時間、人はほとんど通りません。広場にある噴水のしずくに朝日が反射して綺麗ですね。なかなかこの時間に街に出ることがないので新鮮です!

 噴水に見とれていると、噴水の反対側から光がだんだんと増してきます。あら、朝日がどんどん高くなっているのかしら……って、レオナルド殿下じゃないですか!


「ねみー」
ねみー(・・・)、じゃないですよ! 今日はお忍びで街に繰り出す日ですよ! 平民の服を着ているのにそんなにキラキラと。美しさを自粛してください!」


 顔だけ隠せば平民に見える装いではあるものの、やはりその美しいお顔立ちと金髪翠眼、目立ちます。せめて眼鏡でもかけましょうと、鞄からサングラスを取り出して殿下に渡してあげました。この世界にはなかったサングラス、実は特注で作ってもらったのですよ。

 全く忍べていない殿下と一緒に街を歩きます。宿屋の朝は早いはずですから、もうヒロインもお仕事を始めていることでしょう。私は殿下の後ろからこっそりと観察するお役目です。あれ? やっぱり私、来る必要なかったのでは?


「一件目は、あの角を曲がったところだな。『渡風亭(とふうてい)』か」


 殿下が角を曲がって渡風亭に向かい、私は角に隠れて見守ります。宿屋は何件もあるのに、今日一日これやるのでしょうか。殿下、もしかして暇なの?

 殿下が歩く後ろ姿を見守っていると、急にガチャっと宿屋の裏口のドアが開きました。危ないっ! 殿下にぶつかります。もしやこれは定番中の定番、出会い頭にぶつかって、
『いたたた……、ごめんなさい! 私ったら!』
っていうパターン?! シナリオライター大丈夫?


「きゃっ……!」


 女の人の小さな悲鳴のあと、彼女が持っていたゴミ袋が道に落ちて、ゴミをぶちまけてしまいました。あらら、やってしまいましたね。王太子殿下にゴミというのはさすがにちょっとよろしくないです。


「いたたた……、ごめんなさい! 私ったら! すぐに片付けます。お洋服は汚れていないですか?」


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