ヒロインよ、王太子ルートを選べ!

第11話 王太子の言い分 ※レオナルドside

 グランジュール王国は建国百年を迎える安定した国だ。優しい国王夫妻に、何不自由ない生活。周辺国家との関係も良好で争い事もない。
 兄弟姉妹もなく、俺はなんの苦労も困難もないまま、気付いたら王太子だ。

 人生チョロいなと思った。

 大人に少しでもニッコリ笑顔を見せれば悲鳴を上げて喜ぶ。友達とは対等に話せたけれど、結局は親が王太子に取り入ろうとするために連れてきた道具に過ぎない。特に俺に群がるご令嬢たちは、王太子妃の地位だけが目当てなんだろうと思った。

 九歳の時、二人の中から婚約者を選べと言われた。

 友人のマティアスの妹、リンゼイ・ベルラント公爵令嬢と、これまた友人のジェレミーの妹、コレット・リード公爵令嬢。

 リンゼイは体が弱いけど、芯の強い美少女らしい。コレットは律儀で真面目だけど、変わった子だと聞いた。

 どっちもどっちだな。

 まあ、どっちだっていいよ。俺が笑顔の一つでも見せてやれば、ちやほやしてくれるんだろ?

 俺は言われるがままに、まずはコレットと会う事になった。二歳年下の黒髪の少女。うん、別に悪くない。むしろちょっと可愛いじゃないか。


「王太子殿下、コレット・リードと申します」


 なんだ、俺の金髪に合わせた色のドレスなんてわざとらしいな。俺に気に入られたい気持ちが滲み出すぎだぞ。仕方ない、俺のとっておきの笑顔でも見せてやるか……って、お前全然俺のこと見てないだろ!

 視線の先には……友人のエリオット。どう言う事だ? 俺よりエリオットがいいのか?


「殿下はマジメすぎて、遊んでも楽しくなさそう! 私、エリオット様と遊びたいです!」


 愕然とした。こんな事、今までで初めてだ。

 特別に俺の白い歯まで見せてやったのに。確かにエリオットはいいやつだが、ド変態だぞ?

 この時俺は、絶対にコレットと婚約すると固く心に決めた。

 俺に全く興味を示さない少女に、逆に惹かれてしまったのと、変態から守ってやらねばと言う庇護欲が湧いたからだ。あとは、やっぱりとんでもなく可愛いから。
 でも、俺がコレットを気に入って婚約者に選んだなんて聞いたら、コレットはどう思うだろう。


「王太子殿下とは婚約しません! エリオット様がいいわ!」


 なんて言い出しかねない。『お互いに、致し方なく婚約することにした』……みたいなストーリーがいいな。
 そんな時に起こったのが、コレットの乗った馬の暴走だった。

< 62 / 244 >

この作品をシェア

pagetop