俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
五章
五章

 土曜日。日菜子は悠馬の待つカフェに向かった。彼にあるお願いをするためだ。
 妊娠発覚から数日が経ったが、まだ善には打ち明けていない。

(妊娠を知ったら、善さんはきっと……)

 責任感の強い人だ。たとえ南を愛していたとしても、彼は子どものために日菜子との結婚生活の継続を選びそうな気がする。
 善と本当の夫婦になって一緒に子育てができたら、きっと幸せだと思う。だけど、それは子どもの存在を盾に取って彼を縛りつけることにならないだろうか。

(まぁ、こういう無駄なプライドが私のかわいくないところなんだけど……)

 日菜子の気持ちとは裏腹に、気持ちよく澄み渡った空を見あげる。

 先日と同じカフェで悠馬が待っていた。

「あぁ、よかった。来てくれたんだ」
「約束しましたから」

 短く答えて、日菜子は彼の前に座る。あらためて、正面から彼を見る。やはり……以前とは少し雰囲気が変わった。よくいえば、社会の荒波に揉まれて大人っぽくなったのかもしれない。
 切羽詰まったような表情で悠馬は話し出す。

「この前も言ったけど、本当に後悔してるんだ。彼女とのことは気の迷いだった。やっぱり俺には日菜子しか……」

 彼の言葉は右耳から左耳へと抜けていくだけだ。

(三年前の私は、なんであんなにショックを受けたんだろう。こんなつまらない男性に振られたくらいで)
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