やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?
9
やがて、デザートに移った。ドナーティは、煮梨をぺろりと食べ終えた。
「ふむ。まあ、味は悪くはありませんな」
彼は、口を拭いながら頷いている。
「これなら、我が王立騎士団のメニューに取り入れても、よいでしょう。野菜問題はともかく……」
すると、アントニオが怪訝そうな顔をした。
「王立騎士団のメニューに取り入れる?」
「おや、知らなかったのか」
今度はドナーティが、きょとんとした。
「殿下は私と、賭けをなさったのだ。パッソーニ殿が武芸試合で優勝すれば、ビアンカ嬢のメニューを、王立騎士団で採用すると。殿下は、賭けに勝たれたというわけだ」
アントニオは、眉をひそめてビアンカを見た。
「初耳だぞ。なぜ言わなかった?」
「ええと、それは……」
「言えば、俺が緊張すると思ったか? 俺は、そんなにプレッシャーに弱そうに見えるかな」
アントニオは、軽く口を尖らせた。
「…………そんなことはないわ」
「今、ものすごく間があったぞ」
やり取りを聞いていたステファノとドナーティは、クスクス笑った。とりなすように、ステファノが言う。
「まあまあ。パッソーニ殿には、剣術の能力だけでなく、精神力も備わっておるぞ? でなければ、あのような公衆の面前で、決勝まで勝ち残れはしない。加えて、その後の私との勝負でも、立派に戦った。何試合もこなして疲労した後で、あの戦いぶりは素晴らしい。並の者にはできんだろう」
アントニオはそれを聞いて、おやという顔をした。
「殿下。途中まで本気を出されなかったのは、もしや私の体力を気遣われたのですか」
「さよう」
ステファノは、あっさり答えた。
「ずっと観戦していただけの私が、すでに何人もと戦った後のそなたを相手にするのは、フェアではないだろう。だから、そなたにはハンデをやったのだ」
(そういうことだったんだ……)
ビアンカは、納得した。同時に、アントニオは試合中ステファノに何を囁いたのだろう、と疑問を覚える。だが、さすがに聞きづらかった。
「気になさるなら、日を改めればよろしかったのでは?」
ドナーティが、苦笑交じりに口を挟む。ステファノは、けろっと答えた。
「途中で気付いたのだ。あの時は、この男と戦ってみたくてたまらなかったからな」
やれやれといった様子で、ドナーティが肩をすくめる。アントニオも、何やら拍子抜けしたようだった。ビアンカも同様だ。引き抜き目的で、あえて力を抑えているのかと思っていたが、深読みだったか。
(殿下って、何だか可愛い方かも……)
「ふむ。まあ、味は悪くはありませんな」
彼は、口を拭いながら頷いている。
「これなら、我が王立騎士団のメニューに取り入れても、よいでしょう。野菜問題はともかく……」
すると、アントニオが怪訝そうな顔をした。
「王立騎士団のメニューに取り入れる?」
「おや、知らなかったのか」
今度はドナーティが、きょとんとした。
「殿下は私と、賭けをなさったのだ。パッソーニ殿が武芸試合で優勝すれば、ビアンカ嬢のメニューを、王立騎士団で採用すると。殿下は、賭けに勝たれたというわけだ」
アントニオは、眉をひそめてビアンカを見た。
「初耳だぞ。なぜ言わなかった?」
「ええと、それは……」
「言えば、俺が緊張すると思ったか? 俺は、そんなにプレッシャーに弱そうに見えるかな」
アントニオは、軽く口を尖らせた。
「…………そんなことはないわ」
「今、ものすごく間があったぞ」
やり取りを聞いていたステファノとドナーティは、クスクス笑った。とりなすように、ステファノが言う。
「まあまあ。パッソーニ殿には、剣術の能力だけでなく、精神力も備わっておるぞ? でなければ、あのような公衆の面前で、決勝まで勝ち残れはしない。加えて、その後の私との勝負でも、立派に戦った。何試合もこなして疲労した後で、あの戦いぶりは素晴らしい。並の者にはできんだろう」
アントニオはそれを聞いて、おやという顔をした。
「殿下。途中まで本気を出されなかったのは、もしや私の体力を気遣われたのですか」
「さよう」
ステファノは、あっさり答えた。
「ずっと観戦していただけの私が、すでに何人もと戦った後のそなたを相手にするのは、フェアではないだろう。だから、そなたにはハンデをやったのだ」
(そういうことだったんだ……)
ビアンカは、納得した。同時に、アントニオは試合中ステファノに何を囁いたのだろう、と疑問を覚える。だが、さすがに聞きづらかった。
「気になさるなら、日を改めればよろしかったのでは?」
ドナーティが、苦笑交じりに口を挟む。ステファノは、けろっと答えた。
「途中で気付いたのだ。あの時は、この男と戦ってみたくてたまらなかったからな」
やれやれといった様子で、ドナーティが肩をすくめる。アントニオも、何やら拍子抜けしたようだった。ビアンカも同様だ。引き抜き目的で、あえて力を抑えているのかと思っていたが、深読みだったか。
(殿下って、何だか可愛い方かも……)