やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?

13

「そうなのですか!?」

 ビアンカは、目を剥いた。

「あ、いや、それは一要因かと。アントニオが決断したのは、もちろん王立騎士団が名誉な存在であられるからで……」

 ジョットは、大慌てで取りつくろっている。ビアンカは、ぴゅーっと厨房を飛び出した。うかつだった。この騎士団寮の皆に、専属料理番の話が伝わっていても、何ら不思議ではない。もしアントニオが決断した理由がそれだとしたら、まずい。ちゃんと誤解を解かねば……。

「アントニオさん!」

 ビアンカは、食堂の扉を開け放つと、わめいた。

「私なら、王都へは行きませんよ!? 専属料理番の話は、お断りしました!」

 アントニオは、何やら書類にペンを走らせていたが、バッと顔を上げた。

「何だって!?」

「ですから、もし誤解されているのなら……」

「もう遅い」

 ドナーティは、アントニオの手から、素早く書類を取り上げた。

「もう彼は、入団に同意するというサインを終えた。撤回はできぬぞ」

「ちょっ……、ビアンカ、嘘だろう……」

 アントニオは、呆然とビアンカとドナーティを見比べている。ドナーティは、愉快そうに笑った。

「残念であったな。愛しい女はここに残るそうだ。お前一人が、王都へ行くのだ」

「ビアンカァァァァァ……!」

 その日、騎士団寮の食堂では、アントニオの絶叫がこだましたのだった。
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