やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?

15

 全員が、息を呑む。ドナーティにアントニオ、ジョットらは、唖然として、ビアンカとステファノを見比べた。

「駄々っ子、とな?」

 ややあって、ステファノが繰り返す。ビアンカは、キッと彼を見つめた。

「そうですわ。殿下はアントニオさんに、国王陛下のなさったことを謝罪されたとか。ですが、今の殿下の言動は、陛下と何ら変わりございません。女性を意志に反して、連れ去ろうとなさっておいでです!」

「この……、口を慎まないか!!」

 ドナーティが、こめかみを震わせる。だがステファノは、彼を制した。

「よい。ビアンカ嬢の申したことは、その通りだ」
「ですが……」

 ステファノは、くるりと踵を返した。

「ドナーティ。帰るぞ」
「はあ……。ボネッリ邸でございますね?」
「違う。王都へだ」

 ビアンカは、ハッとしてステファノを見上げた。

(諦めてくださったの……?)

「長時間、世話になったな」

 一言そう告げると、ステファノは食堂を出て行きかけたが。ふとこちらを振り返った。

「ああ、パッソーニ殿は共に来るのだぞ? そなたはもう、王立騎士団の一員ゆえ」

 御意、とドナーティが頷く。アントニオは、ドナーティに引きずられて出て行ったのだった。
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