やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?

3

 一方のステファノは、デビュタントボールの直後、国を離れることとなった。パルテナンド王国の同盟国が侵略の危機に襲われ、援軍を要請したからである。この同盟は、父コンスタンティーノ三世が軽はずみに締結したもので、兄・ゴドフレードもステファノも反対だった。だが、要請されたからには無視するわけにはいかない。ステファノは仕方なく、軍を率いて向かった。

 戦いは思いのほか長期化し、ようやく一段落したのは、約半年後だった。殺伐とした戦場で、カブリーニ子爵令嬢の面影は、何度となくステファノの脳裏をよぎった。だがまずは、目の前の戦いが優先だ。ステファノは来る日も来る日も、黙々と剣を振るい続けたのだった……。

 帰国後のステファノを待っていたのは、カブリーニ子爵令嬢が、チェーザリ伯爵と結婚した、という報告だった。同時に、男性貴族らはステファノに遠慮して、彼女にアタックしようとしなかった、とも聞いた。その時ステファノを襲ったのは、激しい後悔だった。なぜさっさと、行動に出なかったのか。せめて、婚約だけでもしておけば……。

 結婚祝いの言葉を述べるステファノに向かって、チェーザリ伯爵テオは、神妙に礼を述べた。ステファノは、こう自分に言い聞かせた。誰もが自分に遠慮する中、彼は果敢にも彼女に求婚したのだ。それだけ、気に入ったのだろう。だとすれば、きっと彼女を大切にするはずだ……。

(それでも)

 ステファノは、チラと思った。時間を巻き戻せればいいのに、と。
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