やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?

3

「どういうことですの!?」

 ビアンカは、リーダーらしき男に食ってかかった。彼が、重々しく説明する。

「ステファノ殿下及び王立騎士団に、食事のメニュー表を提供したのは、そなただな。不味くて、食べられたものではないそうだぞ。一ヶ月間その献立に従ったせいで、王立騎士団の士気は落ち、すっかり弱体化した。そなたの狙いは、それであろう!」

「ちょっとお待ちよ。そんなはずはないだろう」

 果敢にも割って入ったのは、エルマだった。

「あたしはこの子の監督をしてきたが、この子の作る物は、標準以上だよ。たまたま、お偉いさん方のお口に合わなかっただけじゃないのかい。それを反逆罪だなんて、飛躍し過ぎだよ!」

 スザンナも、加勢した。

「そうですわ。それに、ステファノ殿下やドナーティ様は、姉の料理を気に入ってくださいました。不味いだなんて、何かの間違いに決まっています!」

「ステファノ殿下及びドナーティ団長は、今ロジニアに行っておられる。だが、残った団員の全員が、口をそろえておるのだ。かくなる上は、徹底的に取り調べるぞ」

 リーダーが、ビアンカの腕をつかむ。エルマは、そんな彼に取りすがった。

「この子を連れて行くなら、代わりにあたしを連れてお行き。この子を指導したのは、あたしだ。責任は、あたしにある!」

「エルマさん、もういいですから……」

 ビアンカはエルマを押し止めようとしたが、彼がエルマを突き飛ばす方が早かった。

「年寄りが、邪魔をするな!」

 力任せに振り切られ、エルマが地面へと倒れ込む。すると不意に、驚いたような声が上がった。

「エルマ!?」

 見れば馬車の中から、一人の団員が降りて来るではないか。端正な顔立ちをした、中年の男性だった。彼を見たとたん、エルマの顔には動揺が走った。

(知り合い……?)

「どうして……? 君はまだ、ここに……?」

 男性が、エルマの元へ駆け寄ろうとする。だがリーダーらしき男は、彼を叱り飛ばした。

「勝手な行動は慎んでもらおう、コリーニ殿。とにかく、ビアンカ・ディ・カブリーニは直ちに連行する。これは、コンスタンティーノ三世陛下の命だ!」

 弁明の機会も与えられないまま、ビアンカは馬車へと押し込められたのだった。 
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