やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?

7

「なっ……、デタラメです!」

 ビアンカは、顔色を変えた。言うに事欠いて……。だがそこへ、聞き覚えのある声がした。

「ああら。図々しくも、晩餐会に殿下のカラーをまとって現れたのは、どなただったかしら?」

 追従笑いを浮かべながら、カルロッタの隣に寄り添ったのは、レオーネ夫人だった。

「おまけに武芸試合では、ちゃっかり殿下のお隣に座らせていただいて……。ちょっと構われたくらいで、愚かにも夢を見てしまったのねえ。でも相手にされないから、仕返ししようと思いつめたのでしょう」

 またあなたですか、とビアンカはため息をつきたくなった。だがそこで、ビアンカはふと気付いた。こちらを見るカルロッタの眼差しに、激しい憎悪が宿っていたのだ。レオーネ夫人に恨まれるのはわかるが、国王の愛人に憎まれる心当たりはない。そもそも、今回はもちろん、前回の人生でも、彼女と関わる機会などなかったのだ。

(なぜ……?)

「事実無根でございます。そのような大それたことも、罰当たりなことも考えたことはございません」

 憤りを隠して、ビアンカは冷静に答えた。ゴドフレードが、苛立たしげに言う。

「カルロッタ殿。そなたの主張は、全て想像の域だろう。確たる証拠もない状況で、罰するなど……」
「ゴドフレード殿下」

 カルロッタは、びしりとゴドフレードの言葉を遮った。不遜な目つきで、彼をにらみつけている。

「今回の件、コンスタンティーノ三世陛下の命ということを、お忘れかしら? そして陛下が、決定権を私に委ねられたことを……。いくら王太子殿下といえども、今あなたが、私にご意見なさる権限はなくてよ?」

 ゴドフレードが、苦虫を噛みつぶしたような顔で黙り込む。ビアンカは、絶望的な気分になった。

(そうだったの……?)

「処分は、おって下す。この娘を、牢へ入れるように」

 高慢な口調で言い捨てると、カルロッタはくるりと踵を返したのだった。
< 122 / 253 >

この作品をシェア

pagetop