やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?
10
「興味だなんて……。誤解ですのに……」
ビアンカは、呆然と呟いていた。テオはしゃがみ込むと、ビアンカと視線の位置を合わせた。
「いずれにせよ、君が僕という夫を得れば、夫人も少しは安堵するだろう? その上で、買収すればいいんだよ。金にはとことん汚い女だからな」
「買収と仰いますけれど、チェーザリ家にそんなお金はありませんでしょう?」
家計事情なら、誰よりもよく知っているのだ。するとテオは苦笑した。
「アテはある。君が頭をぶつけて死ぬはめになった、あの置物。あれを売り払おうと思う。忌々しい品でもあるしね」
「……冗談でございましょう?」
ビアンカは、耳を疑った。あれは、チェーザリ伯爵家に代々伝わる、貴重な品だ。どんなに困窮しても、売る決心がつかなかったというのに……。
「テオ様は、どうしてそこまでしてくださるんです?」
ビアンカは、ぽつりと尋ねた。
「カブリーニの家にも、再三贈り物を贈られたと聞きました。私でなくてもよいではありませんか。せっかくあなたも、新しい人生を与えられたのです。以前と同じお飾り妻ではなく、他の女性をお選びになればいいではないですか……」
お飾りというほど家柄も容姿も良くないが、などと思いながら、言葉をつむぐ。するとテオは、厳しい声音で言い放った。
「お飾り妻などではない」
ビアンカは、驚いて彼の顔を見つめた。
「何か誤解しているようだが、僕は以前の人生でも、君を愛していた」
「……まさか」
信じられなかった。
「とても、真の言葉とは思えませんわ。浮気するわ散財するわで、私を苦しめて……」
「本心だと言っている」
テオは、じっとビアンカの瞳を見た。
「君、さっき、ステファノ殿下に興味を抱かれているなど誤解だと言ったな? さて、どうだろう。僕は、殿下は君を好いておられると思うぞ? なぜなら、前の人生でもそうだったからだ」
「嘘でしょう。それこそ、あり得ない……」
「ステファノ殿下はな。社交界デビューした君を見て、気に入ったと仰ったんだよ」
ビアンカは、絶句した。だから、とテオが続ける。
「他の男たちは、殿下の不興を買うことを恐れて、君に近付かなかった。それでも僕が君を選んだのは、愛していたからだ」
ビアンカは、呆然と呟いていた。テオはしゃがみ込むと、ビアンカと視線の位置を合わせた。
「いずれにせよ、君が僕という夫を得れば、夫人も少しは安堵するだろう? その上で、買収すればいいんだよ。金にはとことん汚い女だからな」
「買収と仰いますけれど、チェーザリ家にそんなお金はありませんでしょう?」
家計事情なら、誰よりもよく知っているのだ。するとテオは苦笑した。
「アテはある。君が頭をぶつけて死ぬはめになった、あの置物。あれを売り払おうと思う。忌々しい品でもあるしね」
「……冗談でございましょう?」
ビアンカは、耳を疑った。あれは、チェーザリ伯爵家に代々伝わる、貴重な品だ。どんなに困窮しても、売る決心がつかなかったというのに……。
「テオ様は、どうしてそこまでしてくださるんです?」
ビアンカは、ぽつりと尋ねた。
「カブリーニの家にも、再三贈り物を贈られたと聞きました。私でなくてもよいではありませんか。せっかくあなたも、新しい人生を与えられたのです。以前と同じお飾り妻ではなく、他の女性をお選びになればいいではないですか……」
お飾りというほど家柄も容姿も良くないが、などと思いながら、言葉をつむぐ。するとテオは、厳しい声音で言い放った。
「お飾り妻などではない」
ビアンカは、驚いて彼の顔を見つめた。
「何か誤解しているようだが、僕は以前の人生でも、君を愛していた」
「……まさか」
信じられなかった。
「とても、真の言葉とは思えませんわ。浮気するわ散財するわで、私を苦しめて……」
「本心だと言っている」
テオは、じっとビアンカの瞳を見た。
「君、さっき、ステファノ殿下に興味を抱かれているなど誤解だと言ったな? さて、どうだろう。僕は、殿下は君を好いておられると思うぞ? なぜなら、前の人生でもそうだったからだ」
「嘘でしょう。それこそ、あり得ない……」
「ステファノ殿下はな。社交界デビューした君を見て、気に入ったと仰ったんだよ」
ビアンカは、絶句した。だから、とテオが続ける。
「他の男たちは、殿下の不興を買うことを恐れて、君に近付かなかった。それでも僕が君を選んだのは、愛していたからだ」