やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?

3

「さて、協力と言ってもだな」

 ドナーティは、一転真面目な顔になった。

「すぐにそなたを釈放、というわけにはいかない。まずは、潔白を証明しなければいけないのだ。ビアンカ嬢、少し頑張ってもらわねばならないぞ?」

「もちろんですわ。何でしょう? 何なりといたしますわ」

 ビアンカは、ピンと姿勢を正した。うむ、とドナーティが頷く。

「料理長ジャンとそなたに、それぞれ料理を作ってもらうのだ。そなたの考えた、レシピ通りにな。そして、ジャンの作ったものは私とパッソーニが、そなたの作ったものは他の騎士団員らが、それぞれ食すのだ」

 なるほど、とビアンカは合点した。

「私とパッソーニは、そなたの料理を知っておる。ジャンの作った料理を食べれば、彼がレシピに沿っていないとわかるはず。そして他の団員らが、そなたの料理を食べれば、いかにこれまで提供された料理と異なるかがわかるはずだ」

「良いお考えと思います」

 アントニオが、口を挟んだ。

「我々二人が証言しただけでは、弱いですからな。他の王立騎士団員たちがビアンカの料理を食べることで、真実が明らかになるでしょう」

「さよう。というわけでビアンカ嬢、頑張ってもらうぞ」

 ドナーティが、ビアンカの目を見て告げる。はい、とビアンカはかしこまって答えた。ドナーティが、忌々しげに呟く。

「本当に、カルロッタ夫人には大迷惑だ。そもそも、今回の援軍派遣だって……」

 コンスタンティーノ三世がロジニアと同盟を結んだのは、カルロッタにせがまれたからなのだ。弱小国ロジニアとの同盟関係は、パルテナンド王国にとって何の益もない上、有事の際はロジニアに援軍を送るという協定付きである。こんな内容の同盟を結んだのは、ロジニアがカルロッタの出身地ゆえだ。ゴドフレード、ステファノはそろって猛反対したが、コンスタンティーノ三世は聞き入れなかったのである。

(愛人の意向で外交政策を決定するなんて、本当に愚かすぎるわ……)
 
 いつか父王を悪し様に罵っていた、ステファノの姿がふと蘇る。当然だ、とビアンカは嘆息したのだった。
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