やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?

6

 そうこうしているうちに、クレープ生地が完成した。用意していた梨とクリームを載せ、皿に盛り付ける。恐る恐る広間に顔を出すと、カルロッタはまだヒステリックにわめいていた。

「食べる必要なんかないわよ!」

「では、私どもだけで。この食べ比べを終わらせないことには、ロジニアへ戻るなと、ステファノ殿下のお達しでございますからなあ。王立騎士団長と、有能な剣士が欠ければ、戦線はまずいことになるかもしれませんねえ。ロジニアの危機かと……」

 意味ありげに、ドナーティが言う。故郷について言及され、カルロッタは、苦虫を噛みつぶしたような顔になった。

「失礼します。料理が完成いたしました!」

 ビアンカは、思い切って声をかけた。ジャンも作り終えたというので、早速試食してもらうことになった。ビアンカの食事を食べる二人のうち、一人には見覚えがあった。エルマを知っている様子だった、コリーニという男性である。ドナーティとアントニオ、さらにはゴドフレードも加わって、計五人が食卓に着いた。

「では、いただこうか」

 ゴドフレードの号令で、五人はいっせいに、食事を開始した。まずは、シチューだ。一口食べたとたん、声が上がった。

「これは!」

 コリーニだった。目を輝かせている。

「肉が、しっとりして美味しいぞ。本当に、これはチキンか?」

 ビアンカの料理を食べたもう一人も、頷いた。

「不思議だ。野菜が臭くないではないか。何か呪術でも用いたか?」

 本気で言っているようである。一方ドナーティは、悶絶していた。

「もう無理だ……。タマネギそのものの臭い、耐えきれぬ……」
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