やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?

8

 次の瞬間、ジャンは、ぐわっと苦しげな声を上げて倒れ込んだ。ゴドフレードらは、血相を変えて立ち上がった。

「ジャン、どうした!」
「すぐに医師を!」

 ビアンカは、ジャンの元へ駆け寄った。カルロッタを、にらみつける。

「あなたですね。今、毒を飲ませたでしょう!」

 一同は顔色を変えたが、カルロッタは平然としていた。

「無礼な! 何の証拠があって、この私を毒殺者呼ばわりするのかしら?」
「その指輪ですわ」

 ビアンカは、カルロッタの手を指さした。

「皆様、この指輪をお調べくださいませ。毒の粉末が、仕込まれているはず!」
「カルロッタ殿。指輪を見せていただこう」

 ゴドフレードがつかつかと歩み寄ったが、カルロッタは開き直ったような金切り声を上げた。

「必要ありません。この小娘が、デタラメを申しているのよ。逆恨みで、私を陥れる気ですわ!」

 彼女は、王立騎士団員たちを見回した。

「コンスタンティーノ三世陛下は、ビアンカ・ディ・カブリーニの処分を、私に一任なさったわ。私は、彼女を極刑処分とします。あんな料理比べなど、まやかし。判断材料とはいたしません!」

 一同が、息を呑む。カルロッタは、さらにトーンを上げた。

「何をしているの。これは、国王陛下のお言葉と同じなのよ? さっさと、彼女を連れて行きなさい。逆らえば、お前たちも同罪とするわよ!」

 騎士団員らが、顔を見合わせ始める。ビアンカは、消え入りそうな声で呟いていた。

「どうぞ、私をお連れください」
「ビアンカ!」

 アントニオが、駆け寄って来る。ビアンカは、彼を押し止めた。

「止めてください。他の皆様も。処分を受けるのは、私だけで十分です……」

「それはできかねるな」

 不意に、澄んだ声が響き渡った。ハッと顔を上げれば、広間の入り口に、ステファノが仁王立ちになっているではないか。

(どうして……? ロジニアにいらしたのでは……?)

 ステファノは、つかつかと近付いて来ると、カルロッタを見すえた。

「カルロッタ殿。ビアンカ嬢処分に関する、そなたへの権限委任を、コンスタンティーノ三世陛下は取り消された」

「何ですって!? 嘘よ……」

 カルロッタが、青ざめる。ステファノは、厳しい眼差しで彼女を見すえた。

「さらにそなたは、我が国の機密条項を、故郷ロジニアへ流出させておったな? 証拠は挙がっておる。ついては、取り調べを行うこととする。これは、国王陛下の命(・・・・・)だ」 

 ステファノは、王立騎士団員たちを見回した。

「この女を引っ立てよ!」
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