やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?
第十三章 一週間の休暇をいただきました……って、なぜ私は殿下とダンスのレッスンを!?

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 三日後、ビアンカはゴドフレードに呼び出された。室内には、ステファノ、ドナーティも待機していた。

「ビアンカ嬢。この度は気の毒な目に遭わせ、大変申し訳なかった。回復したジャンが、全て自供した。カルロッタに命じられて、デタラメの調理をしていたとのことだ。そなたの名誉は、回復された」

 ゴドフレードが、沈痛の表情で告げる。自分のこともだが、ジャンが一命を取り留めたことに、ビアンカは深く安堵した。

「国王陛下、私、ステファノの三人で話し合った結果、ジャンについては咎めないこととした。言うことを聞かないと家族に危害を加えると、カルロッタに脅されていたそうだ」

 まあ、とビアンカは眉をひそめた。

「そしてカルロッタだが、ステファノの尽力により、情報流出が認められた。また、着けていた指輪から、ジャンが飲まされた毒薬も検出された。彼女には、爵位、領地剥奪の上、国外追放処分が下された。もうそなたに何かすることはないゆえ、安心せよ」

 国王の寵姫ということで、何ら功績がないにもかかわらず、彼女には女侯爵の称号が与えられていたのだ。それにしても、なぜそんな真似をしたのだろう、とビアンカは不思議に思った。ステファノが、補足するように言う。

「国王陛下も、いつまでも在位されているわけではない。自分の栄華が長くはないことは、カルロッタもわかっている。それでいざとなったら出身国ロジニアへ逃亡しようと、今から根回ししていたのだ。パルテナンドの機密を流して、あちらの有力者に取り入ろうという算段だ」

「そして機密を買い取っていたということで、ロジニアとの同盟もスムースに破棄できる見込みだ。やれやれだな」

 ゴドフレードがため息をつく。

「国王陛下亡き後も、カルロッタが権力にしがみつこうとしたのが、全ての原因だ。修道院行きを免れるため、通常は考えられないことだが、ステファノの妃もしくは愛妾の座を狙おうとしたらしい。それで、少しでも目障りな女性は排除しようと目論んだようだ」

 そう説明すると、ゴドフレードはビアンカを見すえた。

「そなたは被害者ゆえ、事情を打ち明けたが、今の話はくれぐれも他言せぬよう。ステファノの名誉にも関わる話であるからな。それに父上のこと、どうせまた、新たに愛人を作るであろう。その女が、同じことを企んでは困る」

「承知いたしました。胸の内に、留めおきます」

 ビアンカは、慎重に答えた。ゴドフレードが、念を押す。

「頼んだぞ。今この場にいる者しか知らぬ、秘密であるからな」

 かしこまりましたと答えつつも、ビアンカはふと不思議に思った。そんな話を、テオはなぜ知っていたのだろう。しかも彼は、ステファノによって宮廷出禁処分をくらっているはずなのに……。
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