やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?

15

 ようやく証拠を手にすると、ステファノは早馬を飛ばして帰国した。真っ先に、父コンスタンティーノ三世の元へ向かったものの、彼はカルロッタの処分に難色を示した。

(国を売ろうとする女を、まだ庇うか)

 頭に血が上ったものの、ここで喧嘩をふっかければ、父はますます意固地になるだろう。そこで思いついたのは、カルロッタの愛人の存在だった。いざという時に備えて確保していた証人たちを呼び出し、証言させると、父は真っ青になった。

「カルロッタ……、よくも……。このパルテナンドから、永久追放してくれるわ!」

 決断の根拠はそちらか、と呆れ果てたものの、この機を逃してはならない。ステファノは素早く、カルロッタを逮捕するという書類に父のサインを得ると共に、ビアンカ事件に関するカルロッタの権限を剥奪する、という了承も得た。

 こうしてようやく広間へ駆け付けたステファノだったが、そこではとんでもない光景が繰り広げられていた。

「これは、国王陛下のお言葉と同じなのよ? さっさと、彼女を連れて行きなさい!」

 ヒステリックにわめきたてるカルロッタと、顔を見合わせる騎士団員たち。当のビアンカといえば、蒼白になりながらも、気丈にこう告げているところだった。

「どうぞ、私をお連れください。処分を受けるのは、私だけで十分です……」

 この期に及んで、他人の心配か。今すぐ飛んで行って抱きしめたいのをこらえて、ステファノは広間へ入ると、カルロッタを連行させた。兄ゴドフレードへの報告を終えると、やっと愛しい娘と向かい合う。

(ああ、髪が伸びたのだな……)

 まだウィッグが必要な短さではあるが、その変化は、離れていた期間の象徴のようだった。どうして一ヶ月もの間、離ればなれでいられたのだろうと思う。

(絶対に失いたくない。このまま、私の手元へ留め置くのだ……)

 かろうじて胸の内にその言葉をしまったのは、周囲の視線があったからだった。
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