やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?
第三章 騎士団マッチョ化計画始動です!

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 翌朝ビアンカは、思いきり早起きした。何やら不吉な予告はされたが、思いがけず調理まで任せてもらえるようになったのは、ありがたい。かくなる上は、皆のために美味しい朝食を作りたかった。

(団長が、アントニオさん。副団長が、ジョットさん。そして、チロさん、ファビオさん、マルチェロさん、と)

 ビアンカは、昨日挨拶した五人の顔を思い浮かべて、心の中で復唱した。

(そして……、エルマさんにもね)

 彼女に認めてもらえるような料理を作りたい。いそいそと支度して厨房へ向かいかけたビアンカだったが、そこへ、ジョットが二階から降りて来た。

「おはよう! ひょっとして、朝食の準備?」
「おはようございます。はい、これから……」

 するとジョットは、なぜかかぶりを振った。

「必要ない。俺たち、朝食は取らないから」
「……はい!?」

 聞き間違えたかと思った。ジョットが苦笑いする。

「昨日、アントニオが言ってただろ。予算不足なのよ、俺ら」
「いや、だからって朝食抜きだなんて……。それでお仕事ができるんですか?」
「何事も、慣れだね」

 妙にキッパリと、ジョットが言う。

「ビアンカちゃんも、一回分仕事が減ったと思いなよ。じゃ、俺ら出勤するから。ああ、アントニオは今日非番だけどね」

 ふわわと欠伸をしながら、ジョットが寮を出て行く。続いて、チロ、ファビオ、マルチェロの三人も降りて来た。ビアンカに挨拶しつつ、当然のようにそのまま出勤して行く。ビアンカは、かろうじて挨拶を返しつつも、呆然と彼らを見送った。

「ビアンカ」

 そこへ、厳しい声がした。ハッと振り返れば、いつの間にかエルマが佇んでいた。

「来なさい」

 短くそう告げると、エルマは自分の部屋を指した。
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