やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?

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 ジェンマはビアンカに、カブリーニ家の近況をあれこれ話してくれた。一番のニュースは、ジョットがスザンナとの婚約を申し込みに来た、ということだった。父は、今度は卒倒することなく、冷静に受け止めたらしい。……が、ジョットが婿入りしたいと申し出たことで、やはりひっくり返ったのだそうだ。

「まったく、もう……。大体、娘が三人なのだから、誰かが婿を取って跡を継がなければいけないじゃない」

「ええ。ですからスザンナ様が十六になられたら、ジョット様はカブリーニ家に入られるということで、話はまとまりそうです……。奥様は、跡を継いでもらうほどの家じゃないわよ、と、ぼそっと仰ってましたけど」

 母らしい、とビアンカは吹き出した。

「ルチアは、元気かしら?」

「はい。ルチア様は、本当に仕立てにご興味がおありのようで。カブリーニ領では学び尽くしたから、今度は王都のファッションを学びたい、と仰っていますわ」

「うーん、気持ちはわかるけれど。それは、難しいのじゃないかしら……?」

 貧乏なカブリーニ家には、娘を王都で過ごさせる余裕はないだろう。かといって、婚約していない立場の自分が王宮にいさせてもらっているだけでも心苦しいのに、妹も住まわせてくれ、などと厚かましいことは言えない。悩んでいると、ジェンマはクスッと笑った。

「でもね、ビアンカ様。それは口実だと思いますわよ。どうやらルチア様は、王都に好きな男性がいらっしゃるようですわ」

「まあっ、誰かしら?」

 そもそもルチアに、王都の男性に知り合いなどいたかしら、とビアンカは首をひねった。

「さあ、それはわかりかねますが……。そうそう、ルチア様からお手紙を預かって参りましたわ」

 ジェンマがビアンカに、封筒を差し出す。ビアンカはルチアに宛てて、クラリッサと会った件を報告する手紙を書いていたのだ。きっと、その返事だろうと思われた。

「ありがとう。色々と、世話をかけたわね」
「とんでもない。王都なんて滅多に来れませんから、ワクワクしましたわ」

 にっこりすると、ジェンマは席を立った。

「では、私はこれで。せっかくなので、王都を見物しますわね」
「ええ、気を付けて」

 ジェンマを送り出すと、ビアンカはルチアからの手紙を開封した。
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