やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?

6

「私が、どう関係するのだ?」

 ステファノが、目をパチクリさせる。ビアンカは、いよいよ恨みのこもった眼差しを彼に向けた。

「テオ様から、聞きましたの。以前の人生で、社交界デビューした私をご覧になって、ステファノ殿下は気に入ったと仰ったのだとか。それで男性陣は、殿下に遠慮して、私を敬遠なさったそうですわ。私は、そんなことはちっとも知らなかったものですから、男性に振り向かれない、寂しい寂しい社交界生活を送っておりましたのよ。そこへ唯一、テオ様が声をかけてくださったのですもの。ほろりときても、当然でございましょう?」

「そのようなことが……?」

 ステファノは、呆然としている。ええ、とビアンカは頷いた。

「そして殿下はといえば、そんなご発言をなさりながら、ロジニアへ行かれてしまったとか。無責任ですわ!」
「それは……、大変、すまなかった……」

 珍しく、ステファノがしゅんと頭を垂れる。しばらく間を置いてから、ビアンカはクスッと笑った。

「いいのですよ」

 ステファノは、弾かれたように顔を上げた。

「だって、こうして人生をやり直せたのですもの。新しい人生で、私は、以前は知り合えなかった多くの人と出会い、たくさんのことを学びました。それは、とても有意義でしたわ」

 ボネッリ伯爵やエルマ、アントニオ、ジョットら騎士団寮のメンバー。ドナーティやジャンといった、王立騎士団の人たち。雲の上の人のようだった、ゴドフレード・イレーネ夫妻。様々な人々の顔が、ビアンカの脳裏をよぎった。

「それに、何より。こうして殿下から愛されて、妃に選んでいただきました。人生をやり直せてよかったと、心から思っています」

「当たり前であろう」

 ふっと、ステファノが笑った。

「何度人生をやり直そうが、どんな形で出会おうが、私はそなたを愛し、妃に選んでいたであろう。それだけは、自信を持って言える。それくらい、私のそなたへの愛は深い」

「で、殿下……!?」

 改まって告白され、ビアンカはカッと顔が熱くなるのを感じた。ステファノは、そんなビアンカの顔をのぞき込んだ。

「今宵、その愛を証明してもいいだろうか」
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