やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?

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 その後ビアンカは、アントニオが教えてくれた安い店で予定していた食材を買いそろえて、寮へ帰った。エルマに断って厨房へ入るも、先ほどの彼との会話は、耳から離れなかった。

 確かに、コンスタンティーノ三世の振る舞いはひどい。だが、王太子のゴドフレードや、第二王子のステファノは、父親とは全然違う。二十二歳のゴドフレードは、物静かな性格だが賢明と聞く。兄とは対照的に武闘派である、十九歳のステファノは、有事の際には率先して軍を統率し、国を守る存在だ。王室全体に反発するようなアントニオの考えには、賛成しかねた……。

 団子をこねながら、あれこれ考えていると、 不意に声をかけられた。

「お、美味そうなもん作ってる」

 見れば、開けっぱなしの厨房の扉に、ジョットがもたれていた。アントニオからもらったらしい揚げ菓子を手にしている。

「お帰りなさい! もうすぐできますからね」
「うん。ビアンカちゃんの初料理が、楽しみでさ。今日は、寄り道しないで帰って来ちゃった」

 ジョットが、ひょうきんに笑う。

「いつもは、知り合いの女の子の所へ寄るんだけど。上手くいけば、飯もご馳走になれるし」

 お前はジゴロかと言いたいが、この食環境ではさすがに責められなかった。

「あ、そうだ。ジョットさん」

 ふと思いついて、ビアンカは彼に聞いてみることにした。

「ステファノ殿下が、視察に来られると聞いたのですが。いついらっしゃるか、ご存じですか?」

 あの状況で、アントニオにはとても聞けなかったのだ。
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