やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?
7
その後ステファノとビアンカは、国王夫妻の元へ挨拶に赴いた。ゴドフレードとイレーネは、にこやかに出迎えてくれたものの、ゴドフレードは弟にやや苦言を呈した。
「まったく、ステファノ、お前は……。いつまで経っても妃を迎えずに気を揉ませたかと思ったら、今度は結婚前に子を作るとは……」
「申し訳ございません。ですが私は、誠心誠意、ビアンカと産まれてくる子を守る所存です。そして今後とも、このパルテナンド王国のため、国王陛下のため、尽くして参ります」
ステファノは、うやうやしく答えた。イレーネは、気遣わしげにビアンカを見た。
「式には、無事のぞめそうかしら?」
「お気遣いありがとうございます。体調は安定しておりますので、大丈夫かと存じます」
ゴドフレードとイレーネは、顔を見合わせると、安堵したように頷いた。微笑みながら、イレーネが言う。
「帰って来たら、期待していてね。ニコラがあなた方のために、特製のご馳走を準備するそうよ。祝宴は行われないとはいっても、恩ある王弟殿下ご夫妻のため今夜の晩餐は是非作らせてほしい、と申し出たの」
「楽しみですわ」
ビアンカは、顔をほころばせた。形は違えど、皆それぞれに、自分たちを祝福してくれている。それがしみじみ嬉しかった。
(私たちは、幸せ者だわ……)
国王夫妻の部屋を辞すると、ステファノは改めてビアンカの姿を見つめた。
「そのドレス、とてもよく似合っている。実に美しい。それから、髪も」
せっかく伸びたということで、ビアンカは黒髪を結わずに垂らしたのだ。白い花をあえて無造作に飾り、シンプルに仕上げている。
「ステファノ様も素敵ですわ」
今日のステファノは、黒を基調とした礼装に、マントをまとっている。白一色のビアンカとは対照的だが、施された金糸の刺繍はおそろいだ。無性に、喜ばしかった。
「ありがとう。しかし……、すまなかったな。ずいぶんとシンプルな結婚式になってしまった」
決まり悪そうに、ステファノが言う。いえ、とビアンカはかぶりを振った。
「子を宿せたのですもの。夢のようですわ。てっきり、授からないものと思っていたのに……」
「授かり物と、言ったであろうが。子も、チェーザリ伯爵が父では、不安だったのであろう。それゆえ、訪れなかったのだ」
けろりと、ステファノが言う。妙にどや顔だ。そんな彼を見ていると、ビアンカは何だかからかいたくなった。
「ではステファノ様は、父親としての自信がおありなのですね?」
「当たり前であろう。国王陛下にも、お誓い申したのだ。パルテナンド王国一の良き父親となることを、約束しよう」
ステファノが、そっとビアンカの手を握る。期待していますわ、とビアンカは微笑んだ。
「私も、良き母親となりますわ。ステファノ様が作ってくださったあの厨房で、この子に心を込めたお料理を作ってあげるのです。そしてもちろん、ステファノ様にも」
「楽しみだ」
ステファノは、嬉しげに頷いた。
「そして、皆で食卓を囲むのだな」
ハッと、ビアンカは思い出した。
(そうだわ。お妃を迎えられたら食事は共にする、と仰っていたわね……)
あの時は、よもや自分がその妃になれるとは、夢にも思わなかったけれど。ステファノの願いが叶ったことが、しみじみ嬉しかった。
(腕を振るって差し上げますわね……)
「まったく、ステファノ、お前は……。いつまで経っても妃を迎えずに気を揉ませたかと思ったら、今度は結婚前に子を作るとは……」
「申し訳ございません。ですが私は、誠心誠意、ビアンカと産まれてくる子を守る所存です。そして今後とも、このパルテナンド王国のため、国王陛下のため、尽くして参ります」
ステファノは、うやうやしく答えた。イレーネは、気遣わしげにビアンカを見た。
「式には、無事のぞめそうかしら?」
「お気遣いありがとうございます。体調は安定しておりますので、大丈夫かと存じます」
ゴドフレードとイレーネは、顔を見合わせると、安堵したように頷いた。微笑みながら、イレーネが言う。
「帰って来たら、期待していてね。ニコラがあなた方のために、特製のご馳走を準備するそうよ。祝宴は行われないとはいっても、恩ある王弟殿下ご夫妻のため今夜の晩餐は是非作らせてほしい、と申し出たの」
「楽しみですわ」
ビアンカは、顔をほころばせた。形は違えど、皆それぞれに、自分たちを祝福してくれている。それがしみじみ嬉しかった。
(私たちは、幸せ者だわ……)
国王夫妻の部屋を辞すると、ステファノは改めてビアンカの姿を見つめた。
「そのドレス、とてもよく似合っている。実に美しい。それから、髪も」
せっかく伸びたということで、ビアンカは黒髪を結わずに垂らしたのだ。白い花をあえて無造作に飾り、シンプルに仕上げている。
「ステファノ様も素敵ですわ」
今日のステファノは、黒を基調とした礼装に、マントをまとっている。白一色のビアンカとは対照的だが、施された金糸の刺繍はおそろいだ。無性に、喜ばしかった。
「ありがとう。しかし……、すまなかったな。ずいぶんとシンプルな結婚式になってしまった」
決まり悪そうに、ステファノが言う。いえ、とビアンカはかぶりを振った。
「子を宿せたのですもの。夢のようですわ。てっきり、授からないものと思っていたのに……」
「授かり物と、言ったであろうが。子も、チェーザリ伯爵が父では、不安だったのであろう。それゆえ、訪れなかったのだ」
けろりと、ステファノが言う。妙にどや顔だ。そんな彼を見ていると、ビアンカは何だかからかいたくなった。
「ではステファノ様は、父親としての自信がおありなのですね?」
「当たり前であろう。国王陛下にも、お誓い申したのだ。パルテナンド王国一の良き父親となることを、約束しよう」
ステファノが、そっとビアンカの手を握る。期待していますわ、とビアンカは微笑んだ。
「私も、良き母親となりますわ。ステファノ様が作ってくださったあの厨房で、この子に心を込めたお料理を作ってあげるのです。そしてもちろん、ステファノ様にも」
「楽しみだ」
ステファノは、嬉しげに頷いた。
「そして、皆で食卓を囲むのだな」
ハッと、ビアンカは思い出した。
(そうだわ。お妃を迎えられたら食事は共にする、と仰っていたわね……)
あの時は、よもや自分がその妃になれるとは、夢にも思わなかったけれど。ステファノの願いが叶ったことが、しみじみ嬉しかった。
(腕を振るって差し上げますわね……)