やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?

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(でも、アントニオさん、やっぱりそうだったんだ……)

 ビアンカは曲がりなりにも、以前の人生で、社交界デビューを経て結婚を経験した。その過程で、男女の駆け引きはそれなりに見てきている。アントニオが自分に好意を寄せていること、周囲がそれを応援しようとしていることには、薄々気付かないでもなかったが。今の彼の言葉で、それは確信に変わった。

(困った、な……)

 新しい人生では、仕事に生きると決めたのに、恋をしている場合ではない。とはいえ、アントニオとは一つ屋根の下にいる以上、関係を悪くするのも嫌だった。

「おはよう」

 そこへ、エルマが顔をのぞかせた。

「おはようございます。腰の調子は、いかがですか?」
「大分良くなったよ。あんたのマッサージが効いたみたいだ」

 エルマは、ニコニコ笑った。

「それはよかったです。朝食が済んだら、またしてあげますね」
「うん、頼むよ……。でも」

 エルマは、ちょっと言いよどんだ。

「あたしの世話も結構だけど、アントニオのことも、もう少し構っておやりよ」

 エルマの台詞とも思えず、ビアンカは目を見張った。あれほど、男性目当てで働きたがっているのではないか、と警戒していたというのに。

「ああ、最初に言ったことは撤回するよ」
 
 エルマは苦笑した。

「あたしは、雇った娘が色恋にうつつを抜かして、仕事をおろそかにするのを警戒していたんだ。挙げ句、男どもをいかがわしいことに巻き込んだり……。あんたは十分真面目だし、王室へも敬意を払っている。もう、そんな心配はしていないよ。だから、もしあんたもアントニオを好いているなら、反対はしないさ」
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