やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?
3
連れて来られた鶏は、全部で五羽だった。それらを小屋へ誘導し、五人の手当てを終えると、ビアンカは彼らに夕飯を振る舞った。豚肉を詰めたパイと、そら豆のスープだ。五人がいつ帰宅してもよいよう、ビアンカは毎晩、夕食を準備していたのである。これにはさすがのエルマも、文句は言わなかった。
「久々の肉、嬉しー! 遠征先では、魚ばっかりだったからさ。文句は言えないんだけど」
五人は、口々にそう言って喜んでくれた。ビアンカは、そんな彼らに意気揚々と告げた。
「明日からは、朝食に期待してくださいね。たっぷりの卵で、オムレツを作って差し上げます!」
計十羽もいれば、さぞや卵もふんだんに獲れることだろう。おおお、と歓声が上がる。すると、アントニオがこう言い出した。
「皆、さらに良い知らせがあるぞ。ボネッリ様は、今回の俺らの活躍を、たいそう評価してくださった。ついては、一つ褒美をくださるとのことだ」
再び、歓声が上がった。
「酒! 酒が欲しい。薄めたのじゃないやつ!」
必死の形相で、マルチェロが叫ぶ。いや、とジョットはかぶりを振った。ピーコックグリーンの瞳を、らんらんと輝かせて主張する。
「菓子がいい。甘い物を食ったら、元気も出るだろ?」
「ジョットが、甘党なだけだろ!」
チロが言い返す。
「俺は、揚げ物が食いたいんだよ!」
飲食系の要望しか挙がらないのが、情けない。一同はヒートアップしていったが、アントニオはそんな彼らを制した。
「待て、待て。皆には悪いが、俺はもう、お願いする内容を決めている」
「何だよ?」
四人が、身を乗り出す。アントニオは、チラとビアンカを見た。
「パンを焼くのに、ボネッリ邸のかまどを使わせてもらうことだ。前に、エルマに相談していたよな? でも、使用料が高いのだろう。俺は、それを値切らせてもらえないかと考えている」
「いいんですか?」
ビアンカは、目を輝かせた。ジョットが、がくっと頭を垂れる。
「何だよ。やっぱり、ビアンカちゃん最優先かよ」
「じゃあ聞くが、お前ら、今のパンの量で足りてるのか?」
うっと、全員がつまる。アントニオは、皆の顔を見回した。
「かまどの使用料金さえ抑えられれば、同じ金額で、市場で買うより断然多くのパンが手に入るだろう。しっかり食っていれば、いざという時に、また活躍できるだろうが?」
「それは、まあ、確かに」
四人は、ちょっと考えてから頷いた。
「今回、思いきり戦えたしな。朝食を食うようになったおかげかな」
「カッコ良かったですとか、女の子に、初めて言われたもんな」
次第にその気になってきたらしき四人を、アントニオは満足そうに見ると、ビアンカの方を向き直った。
「ありがとうございます」
ビアンカは、心から礼を述べていた。残る問題は、ボネッリ伯爵がどれほど値切りに応じてくれるかだ、と思いながら。
「久々の肉、嬉しー! 遠征先では、魚ばっかりだったからさ。文句は言えないんだけど」
五人は、口々にそう言って喜んでくれた。ビアンカは、そんな彼らに意気揚々と告げた。
「明日からは、朝食に期待してくださいね。たっぷりの卵で、オムレツを作って差し上げます!」
計十羽もいれば、さぞや卵もふんだんに獲れることだろう。おおお、と歓声が上がる。すると、アントニオがこう言い出した。
「皆、さらに良い知らせがあるぞ。ボネッリ様は、今回の俺らの活躍を、たいそう評価してくださった。ついては、一つ褒美をくださるとのことだ」
再び、歓声が上がった。
「酒! 酒が欲しい。薄めたのじゃないやつ!」
必死の形相で、マルチェロが叫ぶ。いや、とジョットはかぶりを振った。ピーコックグリーンの瞳を、らんらんと輝かせて主張する。
「菓子がいい。甘い物を食ったら、元気も出るだろ?」
「ジョットが、甘党なだけだろ!」
チロが言い返す。
「俺は、揚げ物が食いたいんだよ!」
飲食系の要望しか挙がらないのが、情けない。一同はヒートアップしていったが、アントニオはそんな彼らを制した。
「待て、待て。皆には悪いが、俺はもう、お願いする内容を決めている」
「何だよ?」
四人が、身を乗り出す。アントニオは、チラとビアンカを見た。
「パンを焼くのに、ボネッリ邸のかまどを使わせてもらうことだ。前に、エルマに相談していたよな? でも、使用料が高いのだろう。俺は、それを値切らせてもらえないかと考えている」
「いいんですか?」
ビアンカは、目を輝かせた。ジョットが、がくっと頭を垂れる。
「何だよ。やっぱり、ビアンカちゃん最優先かよ」
「じゃあ聞くが、お前ら、今のパンの量で足りてるのか?」
うっと、全員がつまる。アントニオは、皆の顔を見回した。
「かまどの使用料金さえ抑えられれば、同じ金額で、市場で買うより断然多くのパンが手に入るだろう。しっかり食っていれば、いざという時に、また活躍できるだろうが?」
「それは、まあ、確かに」
四人は、ちょっと考えてから頷いた。
「今回、思いきり戦えたしな。朝食を食うようになったおかげかな」
「カッコ良かったですとか、女の子に、初めて言われたもんな」
次第にその気になってきたらしき四人を、アントニオは満足そうに見ると、ビアンカの方を向き直った。
「ありがとうございます」
ビアンカは、心から礼を述べていた。残る問題は、ボネッリ伯爵がどれほど値切りに応じてくれるかだ、と思いながら。