やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?

5

「何?」

 アントニオは、ビアンカの視線に気付いたようだった。

「健康的な体格になってくれて、嬉しいなって」

 アントニオは、王室に反感を持っていると聞いている。ステファノの話は伏せて、ビアンカは無難に答えた。

「君の料理のおかげだな。今なら、窓から落っこちてきても、キャッチできるだろう。……試すか?」
「遠慮しておきます」

 ビアンカは、クスクス笑った。すると、裏庭に通じるドアが開いた。エルマだった。何やら、妙に緊張感を漂わせている。

「あら、エルマさん、お帰りなさ……」

「ビアンカ。悪いけど明朝は、役割を交代してくれるかい? あたしが卵を集めるから、あんたはボネッリ邸に行って欲しいんだ」

 エルマが、せかせかと言う。ビアンカは、意外に思った。エルマは、鶏が苦手と言っていたからだ。

「はい、それは構いませんが。エルマさん、鶏は大丈夫なんですか?」

「いや、実はね。ボネッリ様が、何やらあんたに話がおありなんだと。だから、明日の朝、かまどを借りついでにお会いしたら、ちょうどいいんじゃないかと思ってね」

「そうでしたか。はい、私は大丈夫ですが」

 ボネッリ伯爵の用件は見当が付かなかったが、ビアンカはひとまず了承したのだった。
< 43 / 253 >

この作品をシェア

pagetop