やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?

13

「何い!?」

 テオが、顔色を変える。

「まさかお前、新しい人生で、好きな男ができたのか? それで、気が変わったんだな!?」
「そんな人いません。時が巻き戻った瞬間から、あなたとまた結婚なんてあり得ないって思いました!!」
「嘘だ!」

 テオがつかみかかってくる。その拍子に、ビアンカが手にしていた紙がバラバラと落ちた。テオが、さーっと青ざめる。

「お前……。男の裸体画など所持して、恥ずかしくはないのか。破廉恥な!」

 テオが見つめていたのは、チロが描いたアントニオのヌード絵であった。

「この男が好きなんだな! それで、僕と再婚……いや初婚か? どうでもいい。する気がなくなったんだな!」

 ああもう、とビアンカは頭を抱えた。何だか、色々な誤解が起きている気がするけれど。取りあえず言えることは……。

「テオ様。あなたとは、結婚しません!」
「この……!」

 テオが、再びつかみかかってこようとする。それをかわして、ビアンカは彼に盛大なパンチを見舞わせた。だがビアンカは、すっかり忘れていた。ここが、バルコニーだということを。その手すりが、比較的低いということを。そして、騎士たちと同じ食生活をしてきた自分が、すっかり筋肉質になっていたことを。予想外の衝撃をくらって、テオは手すりに叩きつけられた。そのまま、バランスを崩す。さすがにビアンカはあっと思ったが、遅かった。

「ぎゃーっ」

 テオは、手すりを越えて外へ落下していった。
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