やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?

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「お見事だな」

 そこへ、不意に声がした。ハッと振り返って、ビアンカはまたもやハッとした。そこに立っていたのは、ステファノだったのである。

(見られた!? 殺人……じゃなくて、これは正当防衛よっ)

 弁明の言葉を必死に探していたビアンカだったが、ステファノはつかつかと近寄って来ると、ビアンカの手を握った。

「素晴らしい」
「――はい!?」
「先ほどのパンチだ。女性であれだけの攻撃ができるとは、相当体を鍛えていないとできないことだ。噂には聞いていたが、そなたの作る食事には、やはり筋肉を増加させる秘策が盛り込まれているのであろう。さあ、早く私にも教えてくれ」

 ステファノは、目をらんらんと輝かせている。目の付け所はそこか、とビアンカはあっけにとられた。テオ投げ飛ばし事件について、罪に問うつもりはないようだが、かといって放置でいいのか。

「参れ」

 ステファノはビアンカの手を引いて、室内へと戻ろうとする。ビアンカは慌てた。

「で、殿下! あの、テオ……チェーザリ伯爵ですが」
「捨て置け」

 捨て置いていいのか。一応、ここは二階なのだが。

「バルコニーの下には大木もある。運が良ければ引っかかっていることだろう。そもそも、女性に狼藉を働く方が悪いのだ。自業自得よ」

 まあそれもそうかな、とビアンカは思った。それにテオのことだ、たとえ死んでも、もう一回逆行転生したりして。

(だったら、それほど案じる必要はないかな)

 ビアンカはそう結論づけると、ステファノに従ったのだった。
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