やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?
12
「さっ。女性だけになったことですし、早速試着してみましょう!」
夫の落胆など意にも介さず、母は明るい声を上げた。
「せっかくの贈り物ですもの。明日の武芸試合には、着けて行きましょうね」
「えっ、それはできませんわよ」
ビアンカは、当惑した。
「だって、着るドレスがないではございませんか」
エルマのドレスを着れば、またドナーティに色々言われるに決まっている。あの件は、ボネッリ伯爵から聞いて、母も知っているはずなのだが。するとルチアが、ビアンカの袖を引っ張った。
「お姉様、その点はご心配なく! ちょっと、いらしていただけます?」
「はあ……?」
わけがわからないまま、ビアンカは自分の部屋へと引っ張って行かれた。そして、目を見張った。室内には、社交界デビュー用に準備したドレスが飾られていたのだ。ルチアサイズにされたはずの。
「こちら、お姉様のサイズに戻してありますのよ」
ルチアが、得意げに胸を張る。ビアンカは、きょとんとした。
「いつの間に……?」
仕立屋が予約満杯で、晩餐会までにサイズ直しができなかったから、エルマにドレスを借りるはめになったというのに。その時、ビアンカは気付いた。ルチアの目が、真っ赤に充血していることに。
「まさか、あなたが……?」
ええ、とルチアは頷いた。
「お姉様が働きに出ると仰って、私、考えを改めましたの。スザンナも料理を頑張っていますし、私にも何かできることはないかと。それで、仕立てについて勉強し始めたのですわ」
「知らなかったわ……」
妹の成長ぶりに、ビアンカは感嘆した。
「とはいっても、前回の晩餐会までに、仕立て直しする自信はありませんでした。それに、お知り合いが貸してくださると聞きましたし、それでよろしいかしら、と。ですが、借りたドレスのせいで、お姉様が嫌な思いをなさったと聞いて、反省しましたの。それで今回こそはと、頑張りましたわ」
ルチアはドレスを手に取ると、ビアンカに差し出した。
「どうぞ、明日の武芸試合には、こちらをお召しになってくださいませ」
夫の落胆など意にも介さず、母は明るい声を上げた。
「せっかくの贈り物ですもの。明日の武芸試合には、着けて行きましょうね」
「えっ、それはできませんわよ」
ビアンカは、当惑した。
「だって、着るドレスがないではございませんか」
エルマのドレスを着れば、またドナーティに色々言われるに決まっている。あの件は、ボネッリ伯爵から聞いて、母も知っているはずなのだが。するとルチアが、ビアンカの袖を引っ張った。
「お姉様、その点はご心配なく! ちょっと、いらしていただけます?」
「はあ……?」
わけがわからないまま、ビアンカは自分の部屋へと引っ張って行かれた。そして、目を見張った。室内には、社交界デビュー用に準備したドレスが飾られていたのだ。ルチアサイズにされたはずの。
「こちら、お姉様のサイズに戻してありますのよ」
ルチアが、得意げに胸を張る。ビアンカは、きょとんとした。
「いつの間に……?」
仕立屋が予約満杯で、晩餐会までにサイズ直しができなかったから、エルマにドレスを借りるはめになったというのに。その時、ビアンカは気付いた。ルチアの目が、真っ赤に充血していることに。
「まさか、あなたが……?」
ええ、とルチアは頷いた。
「お姉様が働きに出ると仰って、私、考えを改めましたの。スザンナも料理を頑張っていますし、私にも何かできることはないかと。それで、仕立てについて勉強し始めたのですわ」
「知らなかったわ……」
妹の成長ぶりに、ビアンカは感嘆した。
「とはいっても、前回の晩餐会までに、仕立て直しする自信はありませんでした。それに、お知り合いが貸してくださると聞きましたし、それでよろしいかしら、と。ですが、借りたドレスのせいで、お姉様が嫌な思いをなさったと聞いて、反省しましたの。それで今回こそはと、頑張りましたわ」
ルチアはドレスを手に取ると、ビアンカに差し出した。
「どうぞ、明日の武芸試合には、こちらをお召しになってくださいませ」