やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?

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「ルチア……。何てお礼を言ったらいいか……」

 ルチアの目の充血ぶりからして、恐らくは徹夜で頑張ったのであろう。ビアンカは、胸がいっぱいになった。続いて部屋に入って来た、母とスザンナも、微笑ましげな笑みを浮かべている。

「よかったわね、ビアンカ。まずは、着てご覧なさいな」
「はい!」

 ジェンマが駆け付けて、着付けを手伝ってくれる。社交界デビュー用に作った(正確には母のものを仕立て直した)純白のドレスは、きちんとビアンカのサイズに戻っていた。プロの仕立屋に比べれば、ところどころ縫い方の荒さが目立つが、至近距離で凝視しなければわからないだろう。

「ありがとう。ぴったりだわ」

 ビアンカは、心からルチアに礼を述べた。本音を言えば、胸の辺りが多少きついが、これはルチアのせいではないだろう。騎士たちと同じ、筋肉増を目的とした料理を日々食べているうちに、どうやらバストアップしたらしい。

「ウィッグも着けてみましょう」

 短くなった髪の上に、ジェンマが丁寧にウィッグを装着してくれる。最後に、ティアラを飾って完成だ。明るいブラウンのシンハライトが、ドレスの白によく映える。

「お姉様、素敵!」
「とてもよくお似合いですわ」

 妹たちもジェンマも、口々に賞賛してくれた。明日、これを着てステファノに会うことを考えると、自然と頬が緩んでくる。だが、ジェンマの次の言葉に、その笑いは固まった。

「そういえば奥様、あの話はビアンカ様にもうなさいましたの? チェーザリ様が求婚にいらした件ですわ」
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