やり直しの人生では料理番の仕事に生きるはずが、気が付いたら騎士たちをマッチョに育て上げていました。 そしてなぜか、ボディビルダー王子に求愛されています!?

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 他の四人も、それぞれルチアとスザンナに自己紹介する。一通りの挨拶が終わると、アントニオはビアンカに耳打ちした。

「少し、いいかな」
「はい」

 ジョットらは、ルチアたちとしつこく駄弁りたがっている。彼らを置いて、アントニオはビアンカを人気のない所まで連れて行った。ウィッグを、まじまじと見る。

「髪を切っちまって、どうするのかと思っていたけれど……。良い物を持っていたんだな。よかった」
「……ええ」

 ビアンカは、曖昧に頷いた。アントニオは、王室嫌いだ。ステファノから贈られたことは、伏せておいた方がいいだろう。

「そのドレスも、とてもよく似合っている……」

 純白のドレスをまぶしそうに見つめた後、アントニオは、思い切ったようにこう言い出した。

「君は料理番としての仕事に情熱を燃やしているけれど、その装いをしている以上、今日は貴婦人として扱わせていただきたい。だから……、貴婦人として、この一騎士に励ましをいただけないだろうか?」

 ビアンカは、ピンときた。憧れの貴婦人の装飾品を身に着けて、騎士は試合に挑むというのが、パルテナンド王国の伝統なのである。

「……では、これをお持ちになってください」

 ドレスの両袖口には、リボンが飾られている。ビアンカは、左袖のリボンを一つ外して差し出した。アントニオは、恭しく受け取ると、リボンに軽くキスをした。

「百人力だな」
「頑張ってくださいね」

 ビアンカは、心からそう告げた。レシピが採用されるか否かに関係なく、アントニオには、自信を持って戦って欲しかった。

「ああ。エルマから、牛をゲットしろとプレッシャーもかけられているしな」

 アントニオはクスッと笑うと、武具の準備をすると言って、去って行った。
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