雪の日
あれから半年が過ぎて――
麗子(れいこ)にとって、今日は特別な日だった。

ショーウィンドウの前で足を止め、麗子はしばらくぼんやりと眺めていた。
ディスプレイされているのは、純白のウエディングドレスだった。

(れい)?」

突然声を掛けられ振り向くと、(じゅん)だった。
長身の彼の金髪スタイルは、都会のど真ん中にいても目立つ。
そして、麗子を「れい」と呼ぶのは准だけだ。

「やっぱ麗じゃん!」

「准君、久しぶりだね」

「おう。てかお前……ちゃんと食ってんのかよ。また痩せたんじゃねーの?」

ぶっきらぼうな准のひと言で……

「――麗?」

堪えていたものが、一気に溢れだした。
麗子に向けられた困惑した准の視線が、一瞬ショーウィンドウへと向けられた。
准は眉をひそめ、小さく息を吐くと麗子の腕を掴んで引き寄せた。そして麗子の肩を抱き、その手を頭に置いて、麗子の顔を覆うようにして歩きだした。

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