元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

第四十話


「結局、何もわからなかったわね」

 アンナが溜息交じりに言ってベッドに腰を下ろした。

 ――あれから聖剣について書かれた書物を中心に調べたが、求めている記述は見つからないまま点呼の時間となってしまい、私たちは寮の自室に戻ってきていた。
 皆、今夜誕生日を迎える私のことをとても心配してくれたけれど、明日朝一でまた先生の部屋に集合と約束をして解散となった。

 私も自分のベッドに腰を下ろし、笑顔で言う。

「でも皆のお蔭で、先生の過去とか、聖剣を探していることとかわかったし。本当に感謝してる」
「……胸の痣、変わりない?」
「えっと……うん、朝と同じ」

 グロテスクな見た目のそれは、朝と特に変わらずそこにあった。触れてみても痛みや違和感はない。
 アンナはほっとした顔をした。

「このまま何もないといいんだけど……」
「きっと大丈夫。ほら、こんなに元気だし!」

 私はアンナの前で両手を上げて左右に揺れて見せる。
 するとアンナはふふと笑って、思い出したように立ち上がった。

「そうだわ」
「?」

 アンナは自分の机から何かを取り出し、私の元へやってきた。

「まだ少し早いけど、誕生日プレゼント」
「えっ!」

 私は目を見開いて可愛くラッピングされたそれを見つめた。

「明日何もなければ一番いいけど、一応、早めに渡しておこうと思って」
「あ、ありがとう!」

 お礼を言って受け取る。
 いつの間に用意してくれていたのだろう。全然気づかなかった。
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