怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました
11.涙のアニバーサリー《拓海 Side》

「やだの! みなと、もうしない!」

高級感あふれる広々としたアイランドキッチンに、湊人の絶叫がこだまする。

拓海は天を仰ぎ見てため息を逃しながら、走って逃亡しようとする息子を捕獲して、汚れた手を石鹸で洗わせた。

相変わらず湊人のイヤイヤ期は継続中で、拓海を父親と認識した今でも反抗的な態度を取ることが多々ある。

沙綾から聞いた話では、湊人の中では“ママを大好きになっていいのは家族だけ”という謎のルールが存在しているらしく、“ただの拓海”だった今までは、沙綾と仲良くしているのに不満があったらしい。

今は拓海が“パパ”になったことで、自分と同じように“ママを大好きになっていい人”と認識されたはずだという。

だが、やはり沙綾を独占できないというのを本能で察しているらしく、たまにライバル心を見せてくる時がある。

二歳児と言えど、大事な女を取られたくないと思う心はすでに男のもので、拓海は大人げなく受けて立とうと構えている。

しかし、今はそんな男のプライドをぶつけ合っている場合ではない。

「湊人、ママを喜ばせたくないのか?」

今日は沙綾の二十八回目の誕生日。

拓海は夕妃に連絡を取って今日の昼公演のチケットを一枚頼み、劇場の近くのドレスショップで事前に選んでおいたドレスの着付けとヘアメイクの予約を入れた。

たまにはひとりの時間を満喫してくるようにと家から出したのは、湊人とふたりで沙綾のバースデーパーティーの準備をするためだ。

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