甘い恋をおしえて
莉帆



秋めいてきた土曜日の午後。
ホテルの宴会場では、華やかなパーティーが開かれていた。
著名な日本画家の還暦を祝う会で、政財界人や文化人など多数の出席者で賑わっている。
格式ある集まりだから女性たちは美しく着飾っており、半数以上が和服姿だ。
妙齢の女性は豪奢な振袖に身を包み、夫候補の紹介を受けているケースも見受けられた。

宮川莉帆(みやかわりほ)は長い髪をまとめあげ、薄いクリーム地に銀杏を散らした訪問着を着ている。
すっきりとしたモダンな柄でありながら格のある装いだ。
細身でやや背の高い莉帆にはよく似合っている。
莉帆は今日、義母の宮川寿江(みやかわとしえ)の名代としてパーティーにきていた。
義母は知人の結婚披露宴と重なったので、この会は莉帆にお鉢が回ってきたのだ。
社交家で知られる義母の顔を潰さないよう、宮川家の嫁として莉帆は最大限に愛想よく振舞っているつもりだ。

宮川家は、宮川商事と子会社からなるグループ企業のトップを務めている家系だ。
高齢だが、当主の甲堂(こうどう)が会長。
その長女の寿江が迎えた婿養子の(たけし)が社長を務めている。
莉帆は武と寿江のひとり息子佑貴(ゆうき)の妻だ。



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