甘い恋をおしえて
夫婦でいられない


***


佑貴は妻を見ていた。
大晦日のパーティー会場で、親戚たちから意地悪な視線を浴びている莉帆を。

(まさか、ここまでとは思わなかった)

佑貴だって、鈍感な方ではない。
ただ身内の悪意に自分は晒されたことがなかったから、妻がこんな目にあっているなんて想像もしていなかったのだ。
佑貴の母は庇うどころか嫁を貶めることに必死だし、いつもなら莉帆を庇う千紘は家族と恒例のハワイ旅行に出かけている。
この会場で莉帆に親身になれる人間はひとりもいない。
おそらく、佑貴を除いては。

だから彼は迷っていた。
莉帆をこんな家から救うために手離すべきか、それとも……。

最初はすぐに別れるつもりだった。
彼女自身のことはよく知らないまま結婚したが、一年、二年と暮らしているうちに情が湧いて離れがたくなっていた。

叔母から強制的に押し切られたとはいえ、老舗の和菓子屋の娘で幼い頃から知っている安心感があったのも事実だ。

知れば知るほど、彼女にひかれた。
家事はそつなくこなすし、料理も旨い。
聞けば管理栄養士の資格をもっていて、実家でも働いているらしい。
わざと彼女と生活時間をずらそうと自分のスケジュールは知らせていないのだが、佑貴のペースにぴったり合う。

驚いたのは、彼女がカフェの経営にも関わっていることだった。
アメリカ支社のCEOの娘が来日した時にあちこち連れて行けと迫られて困ったことがあった。
芝居を見たり買い物をしたり銀座辺りをブラブラしていたら、あるカフェにさっさと入っていくのだ。






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