悪徳転生公女の他国王太子妃生存計画~それでも王太子を愛してしまいました
2.結婚式
なんとかがんばった。

結婚式の衣装合わせもそこそこに、とにかく王太子妃教育をやりとげた。
先生も後にも先にもここまで短期間に頑張った生徒はいなかったと認めてくれたじゃない…。

あとは、結婚式当日、朝からエステと称して、エレンたちが入念に身体を磨き上げてくれ、オフィーリアのにっこりに騙された(言い方は悪いが)王室御用達ブティック『ラングの風』の女性オーナーが魂を込めて作りましたと断言してくれた可憐な純白のドレスに身を包み、神殿の控え室から今足を踏み出した。

マウザナイトから前日王宮入りしていた兄のエスコートでヴァージンロードを歩く。
文字通り正真正銘のヴァージンだ。
だけど、きっと一生ヴァージンなんだろうなとそれはそれで少し寂しかもしれないと思いつつ、それでもゆったり王妃ライフを手に入れるためだとぐっと気合を入れた。

ここからが肝心。

よしっ!行くぞ。

心の中で気合を入れ、いざ壇上へ。
そこには背の高い黒髪の男性が待っていた。
自分の目の前をヴェールが覆っているのでよく見えないが、姿はすらっとしていて背筋はピンとはっており、見るからに軍人風のがっしりした細マッチョに見える。

その男性アシュトン王太子と向かい合うと、まるで自分が子ウサギのように思えた。

病気がちだったオフィーリアは華奢で背も小さめなのだ。

神官が結婚式の述べ口上をつらつらとつらねる。
決まりきった文句だ。
こういう口上はどの世界でも変わらないものだなんて考えてる自分を笑ってしまいそうになっていたときだ。

すっとアシュトンの細く長い指がヴェールに伸びた。

いよいよだわ。

ひょいっとあげられたヴェール。

オフィーリアの顔があらわになる。

そしてそこにはアシュトンの険しく眉をひそめた顔があった。

うっ…。

オフィーリアは心の中でうめく。
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