悪徳転生公女の他国王太子妃生存計画~それでも王太子を愛してしまいました
5.イザベル・ヴィッカーズ
「このプランでは厳しすぎてなかなか着いて来れる子はいないと思いますわ」
なかなか率直な意見を言ってくれる。
こういうの、したかったのよね~。
推しのイザベルと孤児院事業の打ち合わせを進める中、イザベルとの白熱した議論にオフィーリアは歓喜に震えていた。
「そんなことはないと思うわ。思っているより能力を隠し持った子は多いものよ」
「ですが、庶民の…それも孤児がどれほどの辛酸を舐めているかなど…」
そこまで行ってハッとしたように口を閉じた。
言いたいことはわかる。
恵まれた貴族に何がわかると言いたいのだろう。
けれどオフィーリアは元孤児だ。
孤児院に目をつけたのは自分が苦労したからに他ならない。
孤児の中にもいるのだ。
本気で頑張りたいと思っている子は。
「イザベル嬢?あなたはそんな中でもここまできたのでしょう?」
そう言うとイザベルはキッと奥歯を噛んだ。
「逆境を乗り越えることを成し遂げるのは至難の業です」
「だから、乗り越えやすく手を差し伸べるのよ」
イザベルは黙り込んでしまった。
「いいわ。また明日にしましょう」
イザベルを執務室から出るよう促した。
なんと言ってもイザベルはアシュトンの想い人。
アシュトンと触れ合う時間を奪ってはならない。
この間も一緒に庭を散歩しているのを見かけた。
きっと密やかに愛を育んでいるはずだ。
わたしは孤児を助けたい。
そして、できることなら自分が生涯過ごすことになるこの国を暮らしやすい良い国にしたい。
それだけだ。
出て行ったイザベルが隣のアシュトンの執務室の扉を開ける音が響くと、それでもキリリと痛む胸の奥のしこりにオフィーリアは気づいていた。
どうしたのだろう。
最近のアシュトンは…
建国祭の最終日の夜会の時のあの抱擁とキスが体の奥に染みついている。
またあの歓喜を身体が求めているのがわかる。
あの日から時々アシュトンはオフィーリアの部屋にやってくるようになった。
それは必ずお茶の時間で、珍しいお茶やおかしを持ってきてくれる。
そしてしばらくとりとめもない会話をして帰っていくのだ。
どうなってしまったというのか。
あんなにも冷酷な顔で見られていたと思っていたのに、最近では楽しそうに笑った顔を見せてくれたりする。
とまどうことばかりだ。
あまり刺激しないで欲しいのに…
心の奥でどうしても期待してしまうじゃない…。
もしかしたらアシュトンはオフィーリアという正妻との間に、子をもうけるために歩み寄ろうとしているのだろうか?
イザベルはやはり平民だから跡継ぎとなると・・・というようなことを考えているのかもしれない。
その場合は…
わたしはどうすればいいのだろう?
身を…ゆだねるべき?
けれど…
夜会の菜園ではじめて『オフィーリア』と名前を呼ばれたときの響きがあまりに優しくてずっと耳の奥に残っている。
それ以来アシュトンは『オフィーリア』と呼ぶようになったから余計に…
あのやさしさを切なく求める自分がいる。
あの時、腰を抜かしたのは、カシュクートに襲われそうになったからでなくて、アシュトンのキスのせいだとは絶対に誰にも言えないわ。
ぼーっとしてこんなことを考えている自分に気付き、リヴァイに話しかけられてオフィーリアははっとした。
「妃殿下。ノックの音がします」
扉がノックされていることに気づいた。
「はい。どなた?」
「俺だ。入るぞ」
まぁ。
「はい。どうぞ」
あわてて立ち上がり扉を開けるとアシュトンがいた。
軍服を着ている。
なかなか率直な意見を言ってくれる。
こういうの、したかったのよね~。
推しのイザベルと孤児院事業の打ち合わせを進める中、イザベルとの白熱した議論にオフィーリアは歓喜に震えていた。
「そんなことはないと思うわ。思っているより能力を隠し持った子は多いものよ」
「ですが、庶民の…それも孤児がどれほどの辛酸を舐めているかなど…」
そこまで行ってハッとしたように口を閉じた。
言いたいことはわかる。
恵まれた貴族に何がわかると言いたいのだろう。
けれどオフィーリアは元孤児だ。
孤児院に目をつけたのは自分が苦労したからに他ならない。
孤児の中にもいるのだ。
本気で頑張りたいと思っている子は。
「イザベル嬢?あなたはそんな中でもここまできたのでしょう?」
そう言うとイザベルはキッと奥歯を噛んだ。
「逆境を乗り越えることを成し遂げるのは至難の業です」
「だから、乗り越えやすく手を差し伸べるのよ」
イザベルは黙り込んでしまった。
「いいわ。また明日にしましょう」
イザベルを執務室から出るよう促した。
なんと言ってもイザベルはアシュトンの想い人。
アシュトンと触れ合う時間を奪ってはならない。
この間も一緒に庭を散歩しているのを見かけた。
きっと密やかに愛を育んでいるはずだ。
わたしは孤児を助けたい。
そして、できることなら自分が生涯過ごすことになるこの国を暮らしやすい良い国にしたい。
それだけだ。
出て行ったイザベルが隣のアシュトンの執務室の扉を開ける音が響くと、それでもキリリと痛む胸の奥のしこりにオフィーリアは気づいていた。
どうしたのだろう。
最近のアシュトンは…
建国祭の最終日の夜会の時のあの抱擁とキスが体の奥に染みついている。
またあの歓喜を身体が求めているのがわかる。
あの日から時々アシュトンはオフィーリアの部屋にやってくるようになった。
それは必ずお茶の時間で、珍しいお茶やおかしを持ってきてくれる。
そしてしばらくとりとめもない会話をして帰っていくのだ。
どうなってしまったというのか。
あんなにも冷酷な顔で見られていたと思っていたのに、最近では楽しそうに笑った顔を見せてくれたりする。
とまどうことばかりだ。
あまり刺激しないで欲しいのに…
心の奥でどうしても期待してしまうじゃない…。
もしかしたらアシュトンはオフィーリアという正妻との間に、子をもうけるために歩み寄ろうとしているのだろうか?
イザベルはやはり平民だから跡継ぎとなると・・・というようなことを考えているのかもしれない。
その場合は…
わたしはどうすればいいのだろう?
身を…ゆだねるべき?
けれど…
夜会の菜園ではじめて『オフィーリア』と名前を呼ばれたときの響きがあまりに優しくてずっと耳の奥に残っている。
それ以来アシュトンは『オフィーリア』と呼ぶようになったから余計に…
あのやさしさを切なく求める自分がいる。
あの時、腰を抜かしたのは、カシュクートに襲われそうになったからでなくて、アシュトンのキスのせいだとは絶対に誰にも言えないわ。
ぼーっとしてこんなことを考えている自分に気付き、リヴァイに話しかけられてオフィーリアははっとした。
「妃殿下。ノックの音がします」
扉がノックされていることに気づいた。
「はい。どなた?」
「俺だ。入るぞ」
まぁ。
「はい。どうぞ」
あわてて立ち上がり扉を開けるとアシュトンがいた。
軍服を着ている。