年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
むかしむかし
 あるところに、とある女の子がいました。

「──そして、お姫様は王子様と幸せに暮らしました。おしまい」

 毎日母が読んでくれた物語は、いつもこう締め括られていた。
 まだ、無邪気だった幼い頃。私は母にこう尋ねた。

「さっちゃんもいつか王子様と幸せになれるかなぁ」

 布団に潜り込んだまま横にいる母を見上げると、母は決まって

「そうね。さっちゃんにもきっとそんな人が現れるわよ」

と頭を撫でてくれた。

 でも、お姫様になる事が出来ないと知ったのは小学生のときだった。

 いつもは汚れてもいいTシャツにズボンみたいな服で学校に行っていた。
 けれど、近所のお姉さんから貰ったお下がりの、凄く可愛い花柄のヒラヒラしたワンピース。
 どうしてもこれを着ていきたいと駄々を捏ね、渋々母はそれを着て登校する事を許してくれた。

 でも、着て行くんじゃなかった。

「わ~! なんだよその格好! そんな可愛い服着ててもブスはブスのままだな!」

 同級生の男子達にそう囃し立てられて、深く傷ついて泣いて帰ったのを今でもよく覚えている。

 それから可愛い格好をするのが怖くなった。どうせ自分は似合わないからと。

 でも、人を可愛くしたり、綺麗にしたりする事には興味があった。
 だから私はこの道を選んだ。

 自分以外の、誰かを美しくするために。
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