年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
13.
「さっちゃ〜ん。おーい! 手、止まってるけど、大丈夫?」

 目の前で、座って私にメイクされていた香緒ちゃんがこっちを見て手を振っている。

「へっ! あ、ごめん。ぼんやりしてた」

 我に返って持っていたブラシを置くと、私は最後の仕上げに取り掛かった。

 今日は年内最後の撮影日。そしてクリスマスイブ。世の中はどこもかしこも華やかな装いで、何となく皆浮足だっているような気がする。

 そんな中、私はこの前の睦月さんとのショッピングを思い出して一人モヤモヤしていた。
 もちろん、凄く楽しかったし、ずっとドキドキしてた。迷子にならないようにって手を繋いだり、腕を軽くだけど組んだり。周りから見たら恋人同士に見えないかなぁ、なんて思ったけど、現実は違った。

『ねぇねぇ。さっきの人、格好良くない?』

 すれ違った女性2人組からそんな会話が聞こえて来て振り返る。

『一緒にいたの妹? イケメンなお兄ちゃんなんて羨ましい!』

 そんな話をしながら、向こうもこっちをチラ見している。間違いなく私達を見て言っている。

 やっぱり……そうだよね……

 デパートから外に出ながら、私は思い知る。
 だから、私はそっと掴んでいた睦月さんの腕から手を離した。本当はもっと触れていたかったけど、睦月さんが迷惑だろうなって。そんなネガティブなことばかり頭を過ってしまっていた。
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