年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
1.
 その人と出会ったのは、ほんの偶然だった。

 まだ私、 綿貫(わたぬき)咲月(さつき)が21才の頃。今から5年前だ。

 美容専門学校を出てメイクアップアーティストの道を目指していた私は、その頃まだまだ駆け出しのアシスタントだった。

 とにかく数をこなさないと生活出来ないし、毎日ヘトヘトで心が折れそうな事もあったけど、それでも目の前で美しくなっていく人を見ると心が踊った。

 ある日、所属している事務所内のコンテストが行われた。その出来次第では新たな顧客も紹介されてるとあって、みな真剣そのものだ。

 もちろん私も。

 そのコンテストの内容は、全員同じモデルを使って、同じ人に写真を撮って貰ってそれを審査する、と言うものだった。

 その時のモデルになったのが、今ではすっかり有名になったジェンダーレスモデル。私の一学年上の橋本(はしもと)香緒(かお)さん。
 そして撮影したのは、香緒さんの一つ年上で、メインカメラマンの大江(おおえ)希海(のぞみ)さんだ。

 コンテストには入賞しなかったものの、私は香緒さんに声をかけられて専属のヘアメイク担当になった。

「僕たちもまだまだこれからだけど、一緒にやって行けたら嬉しいな」

 女性と見紛うような美しい顔で微笑まれ、私は二つ返事でOKした。

 それから一層勉強に励んで、香緒さんがどうやったらより美しく見えるか、ずっと研究していった。

 それは自分を美しくするより、何倍も楽しかった。
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