年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
17.
「ただいまぁ」

 いつものようにそう言って、今日は灯りの付いている奥の部屋に向かう。
すでに真琴は座り込み、かんちゃんと遊んでいた。

「なんだ。早かったな」

 真琴はこちらを見ようともせず、かんちゃんが咥えたボールを引っ張りあっている。

「当たり前でしょ!」

 誤魔化すようにそう言って上着を脱ぐと掛けに行く。手を洗って戻って来ると、かんちゃんは真琴に遊んでとせがむように膝に乗って顔を舐めていた。

「真琴……かんちゃん、最初からそんなに慣れてた?」

 いくら会うのは2回目だからと言っても、睦月さんには威嚇したのに真琴にはこんなに従順ってどう言うこと? と思ってしまう。

「え~? どうだったっけ。まぁ、前会った時だいぶチビ助だったからなぁ。なんで?」
「いや。あの……睦月さんに会った時吠え始めちゃって」

 それに、真琴はかんちゃんを撫でながら笑い出した。

「なんで笑うのよ?」
「え~? だってさ、コイツも気付いたってことだろ?」
「何がよ?」

 意味が分からないまま、私は小さなテーブルの向かいに座る。かんちゃんは私のほうにやって来ると膝に脚を乗せ尻尾をブンブン振っていた。

「本当、咲月ってそう言うの疎いよなぁ」

 テーブルに肘をつき頬杖をすると、何故か真琴は私を見てニヤニヤ笑いながら続ける。

「あのさ、どっちから告白したわけ?」
< 261 / 611 >

この作品をシェア

pagetop