年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
18.
 不意に電話が架かってきたのは、多分昼の11時半くらいだった。テーブルに置きっぱなしのスマホを手に取って表示を確認すると、それはとっても意外な人物だった。

「もしもーし! 何かあった?」

 電話を取るなりそう言うと、電話の向こうからザワザワとした音と共に、『あ、えーと……今大丈夫ですか?』と恐る恐ると言った低い声が聞こえて来た。

「うん。大丈夫だよ? どうしたの?香緒と喧嘩でもした?」

 俺がそう尋ねると『いえ……それは無いです』と武琉君はキッパリと答えた。確かに2人が喧嘩するなんて、想像は出来ないんだけど。


 何かあったらいつでも連絡ちょうだいね~、と自分の連絡先を渡したのはほんの数日前。じゃあ俺のも、と武琉君とその場で連絡先を交換した。
 それにしても、おそらく外、それもそれなりに人の多そうな場所からわざわざ電話してくる用事ってなんだろうか?

『あの……。ちょっと相談に乗って貰いたい事があって。今から会えないですか?』

 他でもない武琉君のお願いだ。一瞬だけ悩んでから、俺はほぼ即答といった感じでそれに答えた。

「午後から用事あるからあんまり時間取れないけど、それでも良かったら」

 電話の向こうから安堵したように小さく息を洩らす気配がすると『ありがとうございます』と武琉君は言った。
 それから待ち合わせ場所を聞いて、着いたら連絡するからと電話を切った。
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