年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
28.
 今日から世間は3連休。
 3月も終わりが見えてくると暖かい日も増え、どこか遠出でも……と思っていたけど、残念ながら今日、さっちゃんは高校の同窓会だ。俺はそれが始まる夕方5時前にさっちゃんを会場近くまで送ると、そのまま真っ直ぐ家に帰って来た。

「かんちゃーん!散歩行こっか」

 だいぶ日は傾いているが、まだ明るい春の夕方。かんちゃんのリードを持つとそう声をかけた。出かける前に一旦ケージに入れていたかんちゃんは、呼びかけに体を起こすと尻尾を振りながら吠えている。
 すっかりここが自分の家になり、かんちゃんには近所にいつもの散歩コースも出来た。かんちゃんにリードを付け、お散歩に必要なグッズを持つとかんちゃんと外に出た。

「さっちゃん、楽しんでるといいねぇ」

 前を歩くかんちゃんにそんなことを話しかけながら歩く。
 さっちゃんはあまり気乗りはしない、と言っていたけど、それでも高校の頃一番仲の良かった友だちに会えるのは嬉しいと出かけて行った。

 さすがにその相手は男じゃない……と思いたい。聞いてはないけど。

 本当は気が気じゃなくてついて行きたいくらいだった。同窓会なんて魅惑的な場所で再会愛、なんて下手なドラマじゃないけど実際に自分の友人にもいたしなぁ……と盛大に溜息を吐くと、前を歩くかんちゃんは『なぁに?』とばかりに振り向く。

「大丈夫……だよね?」

 俺は自分に言い聞かせるようにそう呟いた。

 30分ほどかんちゃんと近所をぶらぶらしているとさすがに日は落ち、空はオレンジと藍色のコントラストに染まっている。

「帰ろっか」

 かんちゃんはそれに答えるように得意げに吠えてみせていた。
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