年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
4.
「ただいま~」

 玄関に入ると、真っ暗でひんやりした廊下に虚しく自分の声が響く。
 当たり前だが、それに返してくれる人などいるわけはない。俺は廊下の明かりを付けてジャケットを脱ぐと、そばに置いてあるコートハンガーに掛けてから洗面所へ向かった。
 手を洗い、洗濯機から乾燥させてあったスエットを取り出すとその場で着替えた。
 一人暮らしは慣れているはずが、今日みたいな日は少し寂しく感じてしまう。

 楽しかった反動……なのかも知れないなぁ……

 などと虚しく思う。
 奥の部屋に向かい、まずは冷蔵庫から缶ビールを取り出すと、それを持ってリビングの片隅にあるパソコンに向かう。そして、缶の蓋を開けスマホに登録した、さっちゃんの仕事のメールアドレスを眺めた。

 この前の香緒の写真が欲しいと言われて、やっぱりさっちゃんは勉強熱心なんだろうなぁと感心した。
 あれだけ目がいいと言うことは、それだけ見てきたはずだ。きっとなんらかの記録は残してるだろうと思ってはいた。

 最初にこっちから聞いてあげたらよかったかな?

 そう思ったが、さっちゃんから言ってくれたおかげで、すんなり誘えたのだからラッキーだったかも知れない。
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