年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
32.
「睦月さん、これ先に下ろしますか?」

 マンションの駐車場に置いたトラックの上から武琉君に尋ねられる。その手には一番重いはずの箱。やっぱり若いなぁ、なんて感心しながら「そうだね。そうしよう」と台車を近づけて俺は答えた。

 武琉君は手際よく動いてくれるし、希海も黙々と作業を手伝ってくれたおかげで、予定より早く引っ越しは終わりそうだ。
 家に運んだ箱を下ろして、希海がまた台車を下ろしてくれることになっている。俺はまだかなぁ? とエレベーターの表示に目をやる。さっき15階に止まっていた表示が下に降りてきていた。

「武琉君、他に乗せられそうなのある? 希海が降りてきたかも……」

 と俺が言ったところでエレベーターの扉が開く。現れたのは希海ではない。叔父のほうだ。

「よぉ、引っ越し業者! 精が出るな」

 俺の顔を見た途端、司はニヤリと笑いながらそう言った。

「滅多にマンション内で遭遇しないのに、こう言う時は会うんだよねぇ」

 せっかく引っ越し後に粗品持って行って驚かせようと思ってたのに、早くも見つかり、俺は肩を落としながらそう言う。

「残念だったな。で、やっぱり武琉も使われてんだな。まぁ、睦月の倍は働きそうだけど」
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