年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
33.
 さっきまでの重苦しい空気など、全部、綺麗さっぱり吹き飛んだ。ついこの前会ったとき、結婚どころか付き合っていることも匂わせていなかった2人が、突然結婚すると言いだすなんて。

「明日香、竹内の次男坊とか?」

 さすがにお父さんも目を丸くしながら明日香ちゃんに尋ねている。

「あんた次男だったんだ」

 笑いながら振り返り健太にそう言うと、健太は「そうですね!」とヤケクソ気味に返事をしていた。

「待って。2人、付き合ってたの……?」

 まだ呆然としながら明日香ちゃんに尋ねると、今度は私のほうを向いて笑顔を見せた。

「えーと、さっき付き合い始めたとこ」
「さっき? え、でも結婚って!」

 正直、私達よりジェットコースターな展開に私は頭が付いていかない。
 そんな私を見ながら、明日香ちゃんはニッコリ笑うと、今度はお父さんのほうを見た。

「昔ね、おじさんに言われたこと思い出したんだ。高校の頃、進路に悩んでた私に言ったこと、覚えてる?」
「いや……? なんだったかな」

 お父さんは記憶を探るように宙に視線を送るがわからないようだった。

「頭で考えても答えはでない。悩むならまず動いてみろ、意外と上手く行く。って、言ってくれたんだよね。私、あの時悩みすぎて頭がパンクしそうで。おじさんにそう言われて気持ちが軽くなった。で、本当に意外と上手くいってるのよ。今もね?」
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