年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
36.
「さっちゃん、用意できた?」

 お互いの仕事道具が置いてある部屋を覗くと、さっちゃんは仕事用のメイク道具の入ったバッグを持ち上げているところだった。

「うん」

 笑顔でそう答えるさっちゃんに近づくと、その重いバッグを横から攫う。

「じゃあ行こうか。今日の主役と鉢合わせしないうちにね」

 そう言って2人で家を出る。

 今日は6月最後の日。平日の午後だ。昨日まで梅雨らしい天候続きだったけど、今日は早いうちに雨も上がり、今は澄み切った青空が見えていた。

 車を走らせながら、「司って、何気に晴れ男かも」なんて言う。隣でさっちゃんが笑いながら「じゃあ、絶対私達の式には来てもらわないと」と答えた。

 最初は写真を撮るだけだったはずが、いつのまにか大掛かりなサプライズになった今日。ゲストには、主役達に伝えた時間よりかなり前に会場に入ってもらっている。俺達はそれに合わすように早めに家を出たのだった。

「あ、来た来た。さっちゃん! 睦月君!」

 会場に着くと、すでに到着しているゲストが待つ控室に案内された。まずは香緒が手を振って呼びかけてきた。
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