年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
37.
 長門さんと瑤子さんの結婚式は梅雨の合間の本当に良いお天気の日だったけど、そのあとしばらく雨続き。ようやく梅雨も明け本格的に夏がやってくると、私達は少しずつ自分たちの結婚式の準備で忙しくなっていた。

 夏真っ盛りのお盆には私の家族が上京して、睦月さんの弟の朔さん家族とも顔合わせをした。
 暁さんはすっかり向こうに腰を据えてしまい、こっちにはなかなか帰ってこないらしい。久しぶりに会ったお祖父ちゃんに、朔さんのところの2人の子ども達がべったり引っ付いていたのは印象的だった。

 そんな夏もすぎ、段々秋の気配は深まる。

 ――そして。

「いよいよ明日だねぇ」

 10月の3連休の真ん中。
 さっきまで、昨日からこっちに来ている私の家族と夕食を取り帰って来たところだ。
 婚姻届の証人欄も記入してもらい、持って来てもらった戸籍謄本も受け取った。ソファに座りながらそれを眺めて、睦月さんはしみじみとそう口にしていた。

「本当に……。なんか、長かったような短かったような。去年の今頃はまだ睦月さんと知り合ってなかったなんて信じられない」

 ミルクティーの入ったティーカップを持ち上げてそう言うと、睦月さんは穏やかに笑みを浮かべて私を見ていた。

「そうだね。独身最後の夜が俺に来るなんて、1年前は想像できなかったなぁ」

 睦月さんも同じティーカップを手にそう言って笑った。
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